割り切った身体、割り切れない心-15
◇
カチッ。
ライターの音が鳴ったかと思うと、ふわりと煙草の匂いが広がる。
ベッドの縁に腰掛けて、慣れた仕草で煙草をふかす彼の横顔をあたしはボンヤリ眺めていた。
ボーッと一点を見つめながら紫煙を燻らすその表情は、一体何を考えているのだろう。
身体にタオルケットを巻き付けたあたしは、起き上がるとそのまま陽介の隣に座った。
「どうした?」
「……うん、陽介が何考えているのかなあって」
あたしがそう言うと、陽介は一度だけこちらを見てから再び空を仰いで小さく笑う。
その笑顔が、気まずさを隠すためのごまかし笑いみたいに見えて、途端に不安が押し寄せてきた。
……やっぱり、後悔してるのかな。
ズキンと痛む胸を抑えながら俯いたあたしは、彼の顔を見るのが怖かった。
正直、スグルにあてつけるつもりで誘ったセックス。
陽介は友達だし、たかだかセックスくらいでそのポジションは変わらないと思っていた。
でも、陽介に抱かれているうちに、あたしの心には確実に変化が生まれていた。
友達としてすごくいい奴だから、当たり前に好きではあったけど、肌を重ねる内に、キスを交わす内に、その好きの種類が変わりつつある。
もっと、ずっと、陽介が欲しくなっている。
それだけに、陽介が何を考えているのか気になって仕方がなかった。
なかったことにしてほしいって言われるならまだいい。
でも、カノジョへの罪悪感から友達としての関係すら解消されちゃったら――?
いつの間にかあたしはガタガタ小さく唇を震わせていた。
一方で、横で煙草を灰皿に押し当てて火を消した陽介は、自分の膝をグッと握っている。
「……くるみ……俺……」
やけに深刻な声が怖くて、耳を塞ぎたくなる。
いつものおちゃらける様子が全くないから、心臓がどんどん脈を早めていく。
――カノジョにわりいから、俺、もうくるみと会うのやめるわ。
陽介がそう言う様子がありありと浮かんで、キツく下唇を噛み締めた。
イヤだよ、陽介。
陽介まであたしを捨てないで。