長屋にて-1
第八ノ章【長屋にて】
今まで緊張の連続だったお満と竿之介の2人は、瓶之真と師弟の契りを交わした途端に、緊張の糸が途切れてグッタリとなった。
流石の瓶之真も疲労困憊のお満を見て、直ぐに淫らな事をしようとは思わなかった。
時刻は七つ半(午前4時)。
後半刻(1時間)程すれば、通いの門弟が道場に来る頃だが、瓶之真は今日のところは朦朧とする2人をゆっくりと休ませる事にした。
さっき入ってきた道場の入口を出て、母屋と道場の間の空間を通ると、そこには古ぼけた6軒長屋が2棟あった。
「ここは住み込み門弟の寝所じゃ、部屋は沢山空いているから、それぞれ好きな場所で休むがよい」
「瓶之真先生、出来るだけ道場に負担のかからないようにしたいと存じます。2人で一つの部屋を使わせて貰います」
これ以上迷惑を掛けたくないのでお満は遠慮した。しかしその言葉を違う意味に取った竿之介の表情は緩んだ。
(竿之介め、姉との相部屋を喜んでおろうが、おぬしには姉の女体を楽しむ余裕など無い。明日から竿之介は、寝床に入った途端グッスリとなるはずじゃ)
竿之介の心内を敏感に察した瓶之真は、心の中でニヤリと笑った。
「好きにするがいい」
「ありがとうございます」
2人は頭を下げた。
「後半刻もすれば通いの門弟が早朝稽古に来る。本来ならばそなた達も直ぐに稽古を付けるのじゃが、今日は特別である。そなたらは疲れておろうから昼まで休むがよい」
「先生、ご配慮ありがとうございます。明日よりよろしくご指導下さい」
2人は再び揃って頭を下げた。
部屋を選ぶ時、お満は少し思案をした。
(若しかしたらあんな事やこんな事で、色んな声を出してしまうかもしれない)
お満は自分の色っぽい声が、母屋に聞こえないようにと考えた。そして道場や母屋からより遠い、長屋の一番奥の部屋に決めた。
瓶之真に頭を下げて部屋に入った2人は、早速寝巻に着替えた。さすがに疲れ切った2人は、お互いの裸体を見てももう淫らな事をしようとは思わなかった。
備え付けの布団を敷くと、そのまま倒れ込むように眠りの世界に入っていった。
一方、外で意識を失っていた棚唐餅右衛門と2人の小者は、殆ど同時に目を覚ました。そして自分達の異常な状況を見て、慌てて探索を打ち切る事にした。
3人とも前屈みの状態で無言のまま、そそくさと屋敷へと足を急かした。
お満と竿之介の2人が寝入ってから半刻後、道場の方から木刀を打ち交わす音が聞こえてきたが、疲れた2人はそれに全く気づかず、あどけない顔をしてすーすーと寝息を立てたままだった。
しかし、そんな和やかな雰囲気が突然乱れた。
「ふうん、ふうん、はあん」
なんと、寝ているはずのお満が、淫靡な甘い吐息を吐きだしたのだ。
「はあん、はあん」
意識の無いはずのお満の指が、陰毛の無い卑猥な縦スジに食い込み、敏感な部分をクチュクチュと弄っていた。ピチュピチュと水音を立てて、寝巻の尻の部分が淫らな蜜でじっとりと染みを作りだした。
意識の無い指が秘豆を重点にグリグリと刺激を加えながら、もう一方の手は溢れた蜜を指に絡ませて肛門を刺激した。
「ああん…」
蜜にまみれた指は胸元に移動させ、蜜をなすり付けるように乳首を摘まんで刺激を加えていった。
「くうん、いい、いい」
お満が発した喘ぎ声のはずが、その声はお満とは全く違っていた。