長屋にて-3
「ああ、もう、わかったわかったわかり申した。やればいいんでしょやれば」
畳みかけるお敏の言葉に、お満は耐えきれずに同意した。このままじゃ眠れないし、例え眠ったしてもまた勝手に弄られて起こされるのは必至。それならばとっとと自分の意思で弄った方がましだった。
「早く取り憑きなされ」
お満がうんざりしながら言うと、お敏は嬉々としてお満の体に取り憑いた。
【はあい、準備完了で〜す。お願いしま〜す】
「気が散る、黙れ!」
【あい】
ようやくお敏が黙ったので、お満はもう焦らす事無く直ぐに始める事にした。既に寝巻の前は肌蹴ているので自慰行為を妨げるモノは何も無い。お満は右手を股間に持って行き、中指をそうっと割れ目に宛がった。
「はあん…」
【あああん、いい、いい】
割れ目の中は蜜が溢れ、少し擦るだけでクチュクチュと水音がなるほどだった。
「ああ…」
【くううう、いい、お満の体は凄くよいですうう、気持ちよすぎるうう、ああっ、ああああ】
お満にとって、脳内の淫らな喘ぎは嫌では無い。ましてや自分の体を褒めて貰っているのだ。お満は母親の喘ぎ声を聞いて段々と興奮が高まってきた。
「あっ、あっ、母上、これは、あっ、あっ、あっ」
お満は人差し指と親指を使って、包皮の上から秘豆を摘まむと、湯がいた枝豆を摘まみ出すように、グニュグニュと秘豆を刺激し出した。
【いやああああん、やあああああん、きくううう、きくううう、だめええええ】
お満はそのまま自分の感じる部位を刺激し続けると、お敏の言ってたように直ぐに高みへと登っていった。
「あっ、あっ、き、きましたぞ、あっ、あっ、あああん、ああん」
【ああああ、これよこれ、あああん、いいわ、いい、あっ、あっ、凄い、ああん、あああん】
そしてそれが起こった。
「あああん、逝く逝く逝っくううう、ああああああ」
【いやああああんやあああん、逝っぐううう、逝ぐううう、逝ぐ…、あべし】
お満の体内で起こったお敏の爆発的な快感の衝撃波は、一瞬でお満の体内から放出された。その衝撃波は熟睡中の竿之介をモロに直撃した。
熟睡中の竿之介の興奮中枢は、衝撃波の影響で瞬時に覚醒され、竿之介は叩き起こされたようにガバッと身を起こした。竿之介のその目は寝起きの眠気など微塵も感じさせない程血走っていた。
しかしそれだけでは終わらない。竿之介が身を起こしたと同時に、下半身の海綿体に一気に血液が集中し、瞬時にイチモツの体積が数倍になった。さらに休息中に急速に補てんされていた精子を一気に噴出させた。
プシュ―――!プシュ―――!プシュ―――!
想像を絶する快感が幾度も竿之介の体内を駈けめぐる。その刺激に竿之介の精神が耐えきれずに、白目をむいて意識が飛んだ。
お敏の衝撃波は弱まりつつも道場にまで達した。
道場には瓶之真の他、木刀を打ち合う者、真剣を居合いで抜き打とうと構える者など、併せて10人の男が早朝稽古で躍動していた。
しかし、道場に衝撃波が起こったその瞬間、道場に居る者は一斉にビクッと身を震わせた後、動きがピタリと止まった。
「うっ、なんと…」
瓶之真は袴を持ちあげる突如の勃起に驚き、門弟にバレないようにクルリと背を向けた。
木刀を打ち合っていた者達も、突如の勃起に驚き、それを隠すために全員が一斉に下段の構えになった。
今まで激しく打ち合っていた者達は、自分の勃起がバレないように、できるだけしかめっ面をしながら、お互いの相手を睨みあった。
居合いの抜き打ちをしている者は幸いだった。真剣の柄を握った姿勢は勃起が目立たないからだ。
お満から道場まで距離が有ったので、射精させる程の力は無かったはずだ。
しかし、悲しい事に1人だけ射精の被害者が出た。
どうやら極度の早漏と思しきその者は、滲み出る精液の対応に途方に暮れかけたが、唯一の対処方法を取る事にした。
「うっ、い、いたたたた、腹がいたい、はらたつのりにござる。厠に行って参る」
そう言って前屈みになりながら、動き難そうに道場をそろそろと出て行った。
悲しい事に、その者、半作務持次郎(はんさむもてじろう)に、この厳しい試練は当分続く事となりそうだ。