(後編)-6
「あっ…出るっ…」
「えっ!?着けてないのォ!…ダメよ、今日は…」
「待って…動いたら出ちゃう…」
動きを停めた膣孔の中にひくひくと微かな振動を感じる。
「ちょ…ちょっと何?…それ、脅迫!?」
男の腕が無防備になった私の両方の手首を掴んでいた。
「今すぐでなくていいんだ…
いつか…ここに思いっきり出させてくれないかい?」
「何?」
「俺の子供を産んでくれ!
結婚しようよ、会社は辞めてさぁ…二人でコロッケの店を開こうよ。
キミの企画力と僕のコロッケ…きっとうまくいくよ。」
プロポーズなの?
この男、本気で私をコロッケ屋の女房にするなんて事考えてたの?
馬鹿馬鹿しい…
馬鹿馬鹿し過ぎて嬉しくなっちゃうじゃない。
「イヤよ!…私はあなたを愛せないわ。
それとも…ここで妊娠させちゃう?
力で私を奪って、その責任を取ってみせる?」
男はしばらくして、ゆっくりと腰を離した。
繋がっている間はさぞかし切ない気持ちだっただろうと思う。
私はその瞬間、はっきりと心を取り戻した。
まだ豊潤は諦めたりしない。
今回ダメでも次回は必ず食いついて見せる。
あるいは豊潤がもし、ダメならば功績を武器にライバル会社の花鳥化粧品に売り込んでみる手もアリだろう。
もしもこの男が強く食い下がって、そのちゃちな責任を取ってみせると言えば…私はどう思っただろう?
このままではまだまだ退き下がれないのだ。
男のペニスが抜かれて膣孔が自然にきゅぅ…と締まるのを感じた。
そしていつかこのベッドの中で見た奇妙な夢を思い出した。
あれから私は海への出口を見つける事ができたのだろうか?
そういえば大阪の街はそんな所だと教授が言っていた。
そしてたいへん厳しい所だと…
今度もし、同じ夢を見たならばよく覚えておこうと思う。
「河の流れにゆるりと従えば、必ず海に辿り着く。」
ー完ー