どこにでもある ただ ちいさなおはなし1-12
ポーチには小さな古い指輪がふたつ。それから古い手鏡が入っていた。
ドクン。
少年の心臓が鳴る。
「知ってるよね?」
少年が首を振った。
「同じ秘密持ってるよね」
少女が手鏡を覗き込み頷いた。そしてそれを少年に向けた。思わず少年は目を、顔を逸らす。
彼女はいつ自分のヒミツを知ったんだろうか。
誰にも話したことないのに。
「見て。きちんと。……ちゃんと、思い出して」
少女が鏡を手渡してくる。
しかし、それを受け取れなかった。
見たらまたアイツが居るから。
「大丈夫、私が居るから。貴方が違うのならばそれで良い。明日には出て行くから」
少年の身体が小刻みに震え始める。
少女は無理矢理少年に手鏡を渡した。
少年は少女の方を見る。
その小さな体は自分と同じように震えていた。
「貴方が違うのならまた私は探して出会えるまでどこかに座っている。かつての貴方がそうだったように」