投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

もう君に会えないの最初へ もう君に会えない 143 もう君に会えない 145 もう君に会えないの最後へ

届かない想い-1

あたしがジッと久留米さんを見据えていると、彼の手がゆっくりあたしの方に伸びてきた。


思わず目を見開き、ゴクッと喉が鳴る。


久留米さんはあたしの瞳をじっと捕らえながら、その大きな手をあたしの頬にそっと添えた。


ほんのり彼の指先に残った煙草の匂いが、鼻をくすぐる。


彼があたしに初めて触れた瞬間、心臓がキュッと縮まったような気がして、身体もビクッと震えてしまった。


思いの外ひんやりした指先に身体がびっくりしただけじゃない。


ずっとあたしに対して、一線を置いていた彼が、初めてあたしに“男”としての振る舞いを見せてくれたからかもしれない。


心臓はこれ以上ないってくらい激しく動いているくせに、身体だけは金縛りにあったように動けなくなり、久留米さんを見つめるだけだった。


けれど、彼は何をするわけじゃなく、そのまま手を元に戻してしまう。


そして、


「俺には、前に進む資格なんてないんだよ」


とだけ呟いた。





もう君に会えないの最初へ もう君に会えない 143 もう君に会えない 145 もう君に会えないの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前