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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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どっちつかずの気持ち-27

そんなに好きなの?
この人が死んで、もうかなり経つんでしょ?
いいかげん忘れて他にも目を向けたらいいじゃない。


――どうせ、もう会えないんだから。


そのどす黒い感情はゆっくりあたしを飲み込んでいき、写真の中の女の子だけでなく、久留米さんにまでそれをぶつけたくなってくる。


それほど嫉妬の気持ちは大きく歪に膨らんでいた。


「……でも、この人にもう会えないのなら、副島主幹の言った通り、前に進もうとは思わないんですか?

他の人にも目を向けて、幸せになった方がいいと思うんですけど……」


もっともらしい言葉を口にするけど、その裏にあるのは、あたしを見てほしいという下心。


そんな女のことなんかさっさと忘れて、あたしを、あたしだけを見て。


あたしなら、目の前で死ぬなんてバカな真似絶対しないから。


あたしなら、この娘よりもかならず久留米さんを幸せにできるから。


彼の心の中に入りたくて、あたしは潤んだ瞳をまっすぐ久留米さんに向けた。


立体駐車場の切れかかった蛍光灯が時々消えたりして、久留米さんの姿がやけに霞んで見える。


少し癖のある硬そうな髪。薄い唇、鋭い眼差し。


スーツを脱ぎYシャツをまくったことで見える、日焼けした腕は血管が浮き出ていて。


この姿が目に入っただけで、あたしの胸は高鳴る。


どす黒い感情も、この胸の高鳴りも、きっとあたしの心はこの人の心を求めていたからだったんだ。


どっちつかずの気持ちは、ようやく自分の中で答えを出せた。








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