届かない想い-17
彼の手があたしの頭の後ろにまわり、髪の毛の中にそっと入り込む。
その骨ばった大きな手に、一気に跳ね上がる心臓、粟立つ背中。
久留米さんの表情はさっきまでの弱々しいものとは打って変わって、ゾクッとするほど鋭い眼差しになってあたしの瞳を射抜く。
クッと締め上げられるような胸の痛みを感じながらも、あたしは彼から目が離せなかった。
――あたしを受け入れてくれるのだろうか?
真っ直ぐな瞳からは彼の心の内はどうしても読み取れない。
でも、少し間を置いてからゆっくり近付いてくる彼の顔。
それは薄明かりに照らされているせいか、とても妖しく綺麗に見えた。
……それなのに。
近付いてきた彼の顔は、あたしの顔の横をすり抜ける。
端から見れば、彼に抱きしめられて、耳元で甘い言葉を囁かれているように見えるだろう。
事実、あたしもこの先の展開を期待せずにはいられなかった。
でも、現実は甘い言葉なんかじゃなくて彼が言い放ったのはあたしを突き放す拒絶の言葉だった。
「……資格がないっつっただろ」
彼はそれだけ言うと、再び身体を離し、小さく息を吐いてあたしから目を反らした。
それを見た瞬間、彼が自分を受け入れてくれたと期待してしまったことがたまらなく愚かに思えて、恥ずかしさでカアッと顔が熱くなった。