浴室-1
▼
そのバスルームは、内装がピンク色に統一されていた。ショッキングピンクの大きなバスタブの横にシャワーが取り付けられていた。
龍はバスチェアーに座ったミカの後ろに同じように腰掛け、ソープを泡立てながら彼女の身体を優しく洗ってやっていた。
「母さんの肌、ってすごくなめらかできれいだね」
「なにおだててんだ」
「おだててなんかないよ。ほんとだよ」
ミカは嬉しそうに笑った。
「俺さ、真雪があの実習から帰ってきて、俺に泣きながら抱かれた後、こうしていっしょに風呂に入ったんだけどさ」
「ああ」
「その時の真雪の背中に、なんだかよく似てる。母さんの背中って」
「ほんとかよ」
「うん。安心しきっている背中」
「ま、それは当然だよ。お腹を痛めた息子に身体を洗ってもらってるんだから。ある意味ケンジよりも安心してるかも。もっと年取ったら、おまえにこうして介護される日が来るだろうしね」
「任せてよ、母さん」
二人は笑い合った。
「でさ、もっと昔の話なんだけど、俺、中学校で理科の教師にレイプされたじゃん」
ミカは思わず険しい顔をした。「ああ、あれも忌まわしい事件だったな」
「その後も真雪と俺、いっしょに風呂に入ったんだけど、その時にね、真雪、俺のここを握って、刺激して射精させちゃったんだよ」
「マジでか?」
「うん。まだ初体験も済ませてないのにだよ」
「へえ。なかなか大胆だな、真雪」
「だよね」
「恥ずかしかっただろ? 龍。女の子の裸見るのも、その時が初めてだったんだろ?」
「もう、恥ずかしいなんてもんじゃなかったよ。鼻血も出したし。でも、そのことで、なんだか身体の中の、あの教師に汚された部分が全部身体から出て行ったような気がした」
「白い液と一緒に?」
「うん。でも、真雪って、それを意図してやってくれたのかな」
「きっとそうだろうよ」ミカは微笑んだ。
「だからその晩、真雪と初めて繋がった時は、もう、すっかり心も体も清められてた、って気がした」
「素晴らしいね、愛の力は」ミカが笑った。「よし、じゃあ今度はあたしが洗ってやろう。こっち向け、龍」
「恐れ入ります」
二人は向かい合った。ミカは顔を上げて龍の澄んだ目を見た。「おまえ、ほんとに立派になったな。こうしていたら見上げなきゃなんない」
「母上と父上のお陰ですよ」龍は笑った。
「ちっちゃい頃は、あたしの腕の中にすっぽり入ってしまうくらいだったのにな」ミカはそう言って龍の広い背中に腕を回した。「もう手さえ回らないね」
龍も母の身体を抱き返した。「今は俺が母さんを腕の中に抱きしめられるね」
ソープがまつわりついた肌同士がぬるぬると擦れ合った。
「真雪みたいに、ここで出してやろうか?」
「俺だけイくの、いやだよ。せっかくだからいっしょにイきたいな」
ミカはにっこりと笑った。「わかった。どんなポジションで入れる? 龍」
龍は赤くなって母の目を見た。「もう繋がるの? ここで」
「いいじゃないか。もったいぶるなよ。いっしょにイくっつったら繋がるしかないだろ?」
「そ、そりゃそうだけどさ……」龍はますます赤くなって母から目をそらした。
「二人とも全裸だし。せっかくのシチュエーションじゃないか」
「で、でも、ゴムはベッドんとこ……」
「心配いらないよ。今は安全期だ」
龍は少し困惑したように眉尻を下げた。
「で、でも、俺、イく時抜くからね」
ミカは龍の顔を見て少し考えた後、ゆっくりと言った。
「わかった。おまえの好きなようにやって」
「ここだとバックからのポジションだけど……母さんは好き?」
「ああ、感じるね。刺激的で大好きだよ。でも、」
「でも?」
「最初はさ、龍、バスタブの中であたしを後ろから抱いて」
「いいけど……」