崩れていく関係-7
クリスマス前、奇妙な友情関係が始まったあたしと陽介。
最初のうちは警戒心でいっぱいで、昼間とか人の多い場所でしか会わなかったあたしだけど、陽介の女扱いしない接し方が、徐々にあたしの警戒心を解いていった。
陽介が特別なことをしたわけじゃない。
むしろ、特別なことをしなかったからあたしは陽介に心を許すようになったんだ。
気取ったお店に行くわけでもない、お金のかかるような遊びをするわけでもない。
映画をレンタルしたり、近所のファミレスで何時間もお喋りしたり、陽介のアパートでゲームをしたりとか、そんなのばかりだったけど、あたしにはかえってそれが居心地がよかったのだ。
恋人には気合いを入れて会う分、陽介と会うときは張りつめた糸が切れたみたいに、リラックスできた。
初めて純粋な友情を感じることができたあたしは、どんどん陽介と会う回数が増えていくようになる。
ちょうど、スグルの仕事が忙しくてなかなか会えないこともあったから。
でも、スグルにはちゃんと陽介と遊ぶと事前に話して、疚しいことは何もないと伝えていたし、隠し事をしないことでスグルにもちゃんと誠意を見せているつもりだった。
……それが、スグルにとって二股をかけるきっかけになったとも知らずに。
「……裏切り者」
気付けばあたしはポロポロと大粒の涙を溢しながら、スグルを睨み付けていた。
上京してからできた、初めての彼氏。
初めてを捧げ、ずっと一緒だと誓い合ったかけがえの無い存在だったはず。
決して燃え上がるような恋ではなかったけど、穏やかな幸せを感じられるような優しい恋を育んでいたじゃない。
二人の思い出が綺麗であればあるほど、今のスグルがとても汚いもののように見える。
絶対、許さない。
吐き気が込み上げてきて、思わず舌打ちが漏れる。
とにかく、罵倒して、傷つけてやりたい。
あたしが受けた以上の苦しみを与えてやりたい。
そして後悔させて、泣いて縋らせてやりたかった。
さあ、なんて言ってやろうか。
血が上った頭で、どんな風に責め立ててやろうか考えていた時、なぜかスグルはキッとこちらを睨み返してきた。
え……!?
思いも寄らないスグルの態度に、あたしは責め立てるつもりだった言葉を再び飲み込んだ。