崩れていく関係-6
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あたしと陽介の関係が変化したのはいつだったかな。
確か春先、ゴールデンウィークを過ぎたあたりだったような気がする。
ゴールデンウィークに浮気相手と旅行に行ってたと、スグルからカミングアウトされたあの時から、歯車は狂い始めていたのかもしれない。
「くるみ、オレ達別れよう」
あたしの部屋で、北海道のお土産だというホワイトチョコの御菓子をくれたスグルは、「別れてほしい」という言葉のおまけまでつけてくれた。
あの時の、目を合わせようともしなかった、スグルの俯いた姿をあたしは忘れることはないだろう。
「……え、な、何で?」
タチの悪い冗談を言っているって、本気で思っていた。
お土産をくれた上で、別れ話なんて間抜け過ぎるじゃない。
なんとか笑い話にしようとヘラリとおどけてみたが、スグルはあたしの部屋の隅で居心地が悪そうに正座をしていた。
いつもなら、スグルのお気に入りのビーズクッションにもたれて、横になるのが彼のこの部屋での過ごし方なのに、今日のスグルは借りてきた猫みたいに大人しい。
そんな勝手の違う振る舞い、ようやく俯いた顔を上げた時のスグルの表情で、あたしはこれが冗談ではないことを悟った。
下唇を噛み締めて、握り拳を作るスグルは、しばらく黙っていたけど、やがてゆっくりと口を開いて話し始めた。
スグルは今年の2月辺りから、職場で気になる人ができたらしい。
浮気相手のカズネは、あたしよりも、そしてスグルよりも年上の28歳の派遣社員だった。
「二股……してたの……?」
震える声を絞り出したあたしを、申し訳なさそうな顔で見つめたスグルは、小さく頷いた。
予想だにしなかった出来事に、あたしはそのまま後ろに倒れそうになった。
「最初は軽い気持ちで飯食いに行ったりするだけだった。でも、だんだん二人で会う回数が増えるにつれて……、その……関係を持ってしまって……」
どんどん語尾が弱くなっていくスグルを見つめながら、あたしは陽介のことを思い出していた。
あたしは陽介と何度も二人で遊んでいるけど、そんなやましいことを一度たりともしたことがないというのに。