崩れていく関係-10
「オレだって、最初から二股しようと思ってカズネと親しくなったわけじゃない。ホントにただの友達として、飯食ったりするだけだったんだ。“お前とお前の男友達”みたいにな」
「…………」
「……でも、一緒にいる時間が増えていくと、自分をさらけ出していく部分が広がっていってさ。悩みとか弱さとかも出せるようになるんだ。くるみの前でなら虚勢をはって、かっこつけていたけど、友達なら別にかっこつける必要もないだろ? だから、そうやって自然体でいるうちにくるみよりもカズネといる方が居心地がよくなってきた」
カズネのことを考えているのか、スグルの顔つきが少し穏やかになる。
そう言えば、こんな表情を見たのはいつ以来だったかな。
もう思い出せないくらい長い間、あたしはスグルを穏やかな気持ちにさせてあげられなかったのだろうか。
「お前が男友達と会っているのがイヤなのに、それを言えなくて悩んでいる時も、ずっと話を聞いてくれたり、明るく大丈夫だっていつも励ましてくれたりしたんだ」
「…………」
「塞ぎこんでるオレを元気づけようとしてくれるカズネの存在が、だんだん大きくなって……気付いたら、カズネにキスをしてた。そしたらアイツ、実はずっとオレのことを好きだったって言ってくれて……そこから関係が始まったんだ」
二股の事実を知ったときは、そういうことを平気で出来るスグルがまるで異世界の人間のように見えて、さっぱり理解できないと思っていたけど、こうしてスグルの思いを聞いていると、一概にスグルだけを責められる状況ではないような気がしてきた。
スグルをそうさせてしまったのは、紛れもなくあたしだったのだから。
「……でも、いつまでもこんな状態を続けても、カズネにも、お前にも悪いだろ? それに何より、オレがカズネにちゃんとけじめをつけたかったんだ」
そこまで言うと、スグルは決意を固めたのか、凛々しい顔つきになって、真っ直ぐあたしを見つめていた。
「……だから、くるみ。オレと別れてくれ」
きっぱりそう言い切ったスグルは、“カズネのために”深々と頭を下げていて、あたしは涙でボヤけたその姿を、黙って眺めるだけだった。