母の心残り-4
お満は呆れかえりつつも、言い直した。
「ならば、お満が自分の秘部を触っても叱らないのですか」
『あ、あい〜。で、でもだからと言うて、余りふしだらになってはいけませぬ。そなたは淫らな言葉を言い過ぎです』
照れ隠しに母親らしく付け足したが、まったく威厳が無かった。お満はそんな母親をしばらく上目づかいでじーっと見つめ続けた。
「じ――――」
言葉を共にした娘の視線に、お敏は耐えられなくなった。
『い、嫌ならいいのよ、そうよね、母親が取り憑くなんて有り得ないわよね、娘の体で逝きたいだなんて、なんてお莫迦さんなの、ほほ、ほほ、おほほほ』
自分のとんでも無い願いに、バツの悪さを覚えたお敏は照れ隠しに笑った。
「いいわよ。取り憑いても」
『えっ、ま、真ですか』
お敏の顔がパアッと明るくなった。
「あい、でも条件がありまする」
お満が意地悪くニヤリと微笑み、お敏はその笑顔にたじろいだ。
『な、何ですか?』
「あたしが嫌な時には取り憑かない事。取り憑き中でも出て貰えるお呪い(おまじない)を教える事。それと次が一番大事でありまする。もう金輪際やいのやいのとお満を叱らない事。わかりましたか」
お満がお敏に指を突きつけて言った。
『まあ何ですか。母に向かってそのような言葉を吐いて』
お満の強気な態度にお敏はいつもの癖でむかっと来た。そんなお敏に構わずにお満は強く言った。
「わかったのですか!」
『あい…』
「よろしい」
従順なお敏の態度にお満は満足した。
『あい…』
「それではいたしますか?」
お満が厳しい表情から一転し、顔を上気させながら言った。
『い、今からですか』
お敏は生唾を飲み込んだ。実際には飲み込む唾は無かったがそんな気分だった。
「嫌ならいいのですよ」
『ぜ、是非に是非に、お満、直ぐにでもお願いいたしまする。母と一緒に逝って下され』
「ならばどうぞ。お満に取り憑いて下され。あっ、母上、その前にお呪い教えて下され」
『特にお呪いは要りませぬ。お満が『出て行け』と強う念ずれば、母はそなたの体には居られませぬからな』
「さようでございするか。ならばお満は逝く寸前にそう念じる事にしましょう。ほほほ」
お満はそう言ってコロコロ笑った。
『ああん、何と意地悪な』
「ほほほ、嘘でございまするよ。さあ、母上取り憑いて下され。早うしないとお満は母上を待たずにおまんこを弄り始めまするぞ」
お満はそう言いながらしゅるしゅると帯を解き始めた。