微笑♭-1
汐莉との夢の様な一時から、一ヵ月が経過しようとしていた。
「次はいつ?」
別れ際の、汐莉からの言葉が忘れられなかった。
しかし相手は“こども”である。
気まぐれで気分屋で、そのこどもの言葉に期待している自分が情けなくもあった。
しかし何の用も無く、姉夫婦の家をむやみやたらに訪ねる訳にもいかず、俺は八方塞であった。
憧れだった恵利子に“彼氏”が出来て迷走した揚句、俺の欲望はあらぬ方向に暴走し始めようとしていた。
代わりに玩ぶつもりだった少女、いや、こどもに逆に玩ばれる始末である。
(まるでピエロだな、いや、単なるエロっかぁ?」
呆けたような日々を更に数週過ごす事になる。
歓喜の訪問は、突然にやって来る事になる。
週末の午後。
「おじいちゃん、おばあちゃん遊びにきたよぉ〜」
けたたましい少女の声が、玄関口でハウリングする様に響き渡る。
「えっ?この声は汐莉? っと若菜?」
考えてみれば不思議は無かった。
俺の家=汐莉たちにとっても祖父母の家である。
更に言えば、今までも等間隔で遊びに来ていたのである。
それを今まで俺自身が全く意識せずに、避け無視し続けていただけの事であった。
俺の心は躍った。
しかし、何ともバツが悪い。
今まで散々子供扱いしつつ、煙たがっていた姪たちである。
汐莉はともかく、若菜においてはどうにも合わせる顔が無い。
いきなり別人の様に優しい叔父になって、応対されても少女たち流に言わせれば“キモイオヤジ”であろう。
ここはいつも通り、素知らぬ顔で通すしか無かった。
姪たちが訪れて三時間が経過しようとしていた。
「……」
母が俺を呼ぶ声がする。
買い物に行くが何か必要な物が無いかと言う事である。
どうやら可愛い孫娘たちの訪問に、夕食の材料を買い出しに行く様子である。
先程同様、急に玄関口が騒がしくなる。
おそらく、父母に汐莉と若菜で出かける様子である。
単なるスーパーへの買い物も、こどもたちにとってはイベントなのであろう。
(まぁ、好きにすればいいさ)
何となくそう毒づきたくなる気分であった。
「そうだ汐莉この後……」
「どうするの汐莉……」
「ん、ん〜、んとね」
「つまらなくない? 一人で、……られるの?」
「平気だよ、ゲームしてる」
良く聞こえないが、会話の中に汐莉の声が時折挟まれている。
「?」
車の動き出す音。
「トン、トン」
軽やかに階段を上る足音に続き、俺の部屋をノックする音がする。
「お兄ちゃん、居る? お部屋に入っても良い?」
満面の笑みがこぼれそうになるのを抑えのに必死であった。
「ん?、どうした汐莉。何か、用か? ゲームなら無いぞ」
心とは裏腹に、素っ気無い態度で応じてみる。
「……」
その態度に汐莉は口を尖らせて、泣きそうな表情を浮かべる。
「ん〜っ」
ソファに座っていた俺に、無言で体当たりでもするかの様な勢いで突進してくる。
「うそ、うそ、お兄ちゃんも汐莉に会いたかったよ」
俺の胸に、頭突きする勢いで飛び込んできた汐莉を抱きとめる。
その汐莉の髪からは、姉である恵利子と同じ香りが漂う。
単に姉妹なので、同じシャンプーを共有しているだけなのだが、堪らなく良い香りである。
汐莉を膝の上に乗せ体勢を入れ替えると、その勢いのままに抱きしめ唇を重ねる。
特に抵抗はしない。
二ヶ月前の事を思い出させる様に、舌を伸ばし口中に割り入れてみる。
汐莉はどうやら、“わすれてはいない”ようだ。
初々しい動きで、小さな口をいっぱいに拡げ、舌を伸ばし必死に応じてくる。
まだ互いの舌を絡ませるまでには至らないが、それはこれから徐々に教えて行く事にしよう。
「お兄ちゃん」
何故か沈黙が続く。
「ごめん、もしかして、嫌だった…… よね?」
どうやら調子に乗り過ぎた様である。
「ん、ううん、違うの? 謝るのは汐莉の方なの。汐莉、浮気しちゃった」
俯く汐莉に、あっけにとられる俺。
「浮気?、どういう事?」
何とも不思議な事を言われ出鼻を挫かれる。
数十分にわたり、たどたどしい汐莉の話に耳を傾ける。
「ん〜、でもそれは汐莉は悪くないし、自然な事だと思うよ。悪いのはお兄ちゃんの方だし」
全てを聞き終えた後、俺はそう汐莉に同調するかの様な受け答えをする。
どうやら俺との空白の期間に、汐莉には好きな同級生が出来たらしい?
まぁ、小学生と小学生お似合いのカップル、お友達である。
しかし、それは汐莉の思っていた物とは大きく違っていたらしい?
“破局?”は、思いの外早く訪れたようである。
結局のところ好きな男の子とは、お医者さんごっこの延長で終わったらしい?
散々アソコを弄られて、“痛い思い”のみ経験学習した様子である。
最近の小学生もなかなかヤルもので、俺は少なからず感心した。
しかし、本人にそう言う訳にもいかず……
「そうか、きっとすごく痛くて怖い思いしたんだね」
俺は一通り汐莉の話聞き終えると、子供をあやす様にそう言った。
「ここに酷い事されたんだね」
最初に触れた時に似たワンピースの裾口から、そっと指先を差し入れる。
きめ細かい肌の上、指先をゆっくり滑らせ目的地を目指す。
汐莉はまるでそれを待っていたかの様に、固く閉じていた両脚の力を緩めその付け根に指先を招き入れる。