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Betula grossa
【ラブコメ 官能小説】

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嫉妬......-7

「えっ!?あの......」
純が戸惑っていたので
「純が作ったザッハトルテ....」
「あっそうなの?よく知ってたわね!私の好物!亜梨紗から聞いたの?」
「いえ.....その....」
(アタシから聞いたのなら持ってくるわけないだろ!どんな扱いを受けるかわかっているのに!)
私は純からザッハトルテが入った箱を取り上げ叔母に渡した。
「ありがとう!」
叔母はニッコリと微笑んだ。姪の彼氏に対する気遣いを持ち合わせていてくれて助かった。普段の叔母は......
「亜梨紗!ピアノを弾きなさい!レッスンだと思わずに、亜梨紗のコンサートを開いているつもりで弾きなさい!半端な演奏だと直ぐに止めさせるからね!」
「ハイ!」
今までとはうって変わって厳しい言葉に私は緊張した。
「純君だっけ?」
「ハ..ハイ!」
「その辺に立ってられるとスタッフの邪魔になるから亜梨紗の傍にいてね!」
「ハイ!」
私達はピアノの方に移動した。本来ならもの凄く緊張するシュチエーションなのだが純に見つめられていると落ち着いてくるから不思議だ......私は鍵盤に指を置き奏で初めた。



亜梨紗の奏でるピアノを聞きながら書類に目を通していると、亜梨紗の音が明らかに進歩している事に気づいた。
「えっ?」
顔を亜梨紗の方に向けると、亜梨紗は楽しそうにピアノを弾いていた。
「あの子いつの間にこんなに上手くなったの......この1ヶ月で何があったの?」
私は暫く亜梨紗を見つめていた。
「あの子....私達を意識してない......たった一人だけを意識して......その人だけのために弾いている......」
私が出した結論はそうである。
あの子が奏でるピアノから聞こえてくる音はまるで音符が踊っているかのようであった。言葉で上手く説明出来ないがそう感じた。あの子の音が心に響いている....その証拠にスタッフの手が止まってあの子のピアノに聞き入っている......
あの子....楽譜も鍵盤も見ていない......正確には視界には入っているがそれだけである。意識は別にある......時折、彼と見つめ合う時の亜梨紗の表情を見るとそれがわかってしまう....あの子のピアノが進歩したのは彼がいたからである。
「指導者として自信を無くすわね......でもまだまだ私を越えられないわね!」
その時不意に彼が持って来た"差し入れ"に気づいた。
「最近じゃ男の子も作るようになったのかしら......昔は女の子の専売特許だったのに....日本も変わったわね......」
いつもならこんな事はしたくない。素人が作ったザッハトルテなんて口にしたくもない。でも亜梨紗の彼氏なら話は別だ!一応一口だけでも食べておかないと後で亜梨紗がイヤな思いをするだろう。亜梨紗のためにも食べないといけない。私には苦痛な作業だ。私の好物はザッハトルテ....それは間違いない。でも私が好きなザッハトルテは一つしかない....ハインツが作るザッハトルテだけなのである....もう口にする事は出来ないが.....
箱から取り出したザッハトルテは一見なんの変哲もないザッハトルテだった。素人が作った物にしては良い出来に思えた。スプーンを手に取り改めて見ると
「えっ!!」
チョコレートクリームの輝きに目を奪われた。それはハインツのザッハトルテを想い出させたから....私は引き寄せられるようにスプーンで口に運んだ。
「えっ?」
もう一口食べた。間違いない!ハインツのザッハトルテだった。私は亜梨紗の彼氏を見つめた。亜梨紗のピアノのウデを上げ、ハインツのザッハトルテを作るなんて....
「あなたは一体何者?」
私は驚きを持って彼氏を見つめた。
「亜梨紗!」
私は思わず叫んでいた。


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