ヤキモチは偶然に-3
「ちゃんとした格好出来るんじゃん」
私の知っている大川さんじゃなかった。
「ちゃんとした格好出来るんじゃない」
私の知らないサラリーマン時代の大川さんを知っている人。
なぜ、大川さんが無職になったのかも知っているんだろうか?
「私のことはちゃん付けなのに。
私より明らかに年下のあの人のことはさん付けなのね」
大川さんをタカシさんと呼ぶ人。
大川さんがアヤノさんと呼ぶ人。
食器の片付けをしても帰ってこない大川さんを待ちくたびれて
私は大川さんのベッドで一人でゴロリと横になる。
大川さんのパジャマに顔を近づけて
ゆっくり息を吸えば大川さんの匂いがする。
「私、変態みたいじゃん」
大川さんの携帯のアドレスも知らないんだと気付かされた。