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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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どっちつかずの気持ち-16

多分、ホントの意味であたし達はセフレになれたのかもしれない。


互いに誰かを想いながら、身体だけを重ねて慰め合う。


繋いだ手から感じるのはドキドキよりも、一人じゃないと励ましてくれるような安心感。


あんなに塁が大好きだったはずなのに、自分の気持ちの変化に戸惑いながら、ジメジメした肌を夜風に晒しながらあたし達は歩き出した。


「あー、よかった。

誰にも鉢合わせしないで」


塁はホテルから出た瞬間、大きく息を吐いた。


「意外と小心者だよね、塁って。

向こうだってお互い様なんだから堂々としてればいいじゃん。

それとも、あたしと一緒のとこ見られたくない人でもいるの?」


「ハハ、まさか」


塁はそう言って繋いだ手に力を込め、もう片方の手で前髪を触っていた。


コイツが嘘を吐くときは、必ず髪の毛を触る。


付き合っているとき、“友達と飲んでくる”と言って前髪をしきりに触っていた塁は、合コンに出かけていたという前科がある。


隠すから余計に怪しいのをわかってないんだろうか。


今なら、あの娘のことを訊ねるチャンスだと、ゆっくり口を開いた。


でも口から出たのは、


「……そっか」


という短い言葉だけだった。



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