〈選ばれし美肉達〉-10
『さあて、今度は優愛ちゃんのお友達だな』
「!!!!」
専務は既に手中に収めていた優愛の携帯電話を部下から受け取ると、舐めるように写メを調べていった。
さすがに友人は多く、メールアドレスはかなりの数。だが、蛇のようにしつこい専務は、膨大な量の写メを一つ一つ品定めしていった。
『……夏帆?』
その中に、専務は夏帆の面影のある美少女を見つけた。
セミロングの髪は陽射しに明るく輝き、微笑んだ表情には何処か憂いを感じさせる。
『八代……コイツ、夏帆に似てないか?』
専務は八代に携帯電話を手渡すと、自分の思いの同調を求めた。
『……そうか?夏帆よりは真希かな?』
確かに目鼻立ちのしっかりした顔は、夏帆よりは真希に近い。
だが、天真爛漫な雰囲気を放つ真希には無い〈影〉が、その美少女にはあった。
『コイツは誰だ?素直に言わなきゃパンティー下げて、オ〇ニーより気持ちいいコトしてやるぞ?』
「!!!」
専務のニヤケた顔と卑猥な台詞に、優愛の顔は恐怖に固まった。
その写メの美少女は同級生の妹で、年齢は三つ下の後輩である。
そして優愛の暗い過去を宥めてくれた理解者でもある。
どうしても異性に興味の持てない優愛に、初めて“恋愛感情”を抱かせてくれた人……優愛にとって、命の次に大切な人だ……。
『言えない?言えないんだ?』
「ふ、古舘奈和!!古舘…奈和……ううぅ……」
優愛は美少女の名前を叫ぶと、そのまま泣き崩れた……。
何も楽しい事が無かった高校生活が終わる直前、バレンタインデーの日に、奈和は優愛に照れながら手作りのチョコレートを渡した。
その、はにかんだ姿に優愛は初めて胸の高鳴りを覚えた…… 。
それでも消極的な優愛に奈和は積極的に接近した。
メールアドレスの交換に始まり、更には下校時に校門で待っているようになり、そして、奈和と一緒に帰宅への道を歩くようになっていった。
奈和と出会って、優愛は変わった。
生来の明るさを取り戻し、友人達とも積極的に交わるようになっていた。
その時に出来た友人のメールアドレスが、あの携帯電話に記録されている。
その一人一人が掛け替えの無い宝物であり、中でも奈和は特別な存在だった。
優愛の中で奈和は日増しに大きくなっていき、ついに卒業の日に、二人は唇を重ねた。
悪戯な、奈和からのアプローチで……。
二人の関係は今日まで至り、休日には優愛の車で出掛けるのが当たり前になっていた。
当然、性的な好奇心が無いわけではないが、温かい唇を重ねるだけで快感は得られたし、なんの不満も無かった……。
そんな大切な彼女を優愛は裏切った。