夢か現(うつつ)か-1
◇
「う……」
食欲を刺激するような香ばしい匂いで目が覚める。
うっすら目を開けると、レースのカーテンから燦々と爽やかな春の日差しが降り注いでいた。
ムクッと身体を起こせば、固めのマットレスの感触にふわふわの羽毛布団。
あれ……俺は昨夜……フローリングで寝てたはずなのに。
頭をボリボリ掻いていると、
「あ、翔平、起きた?」
と、小夜が白いプレートを運んで来る所だった。
そして、ローテーブルに向かい合わせになるようにプレートを二枚、ゴトリと置く。
そこには、カリカリのベーコンや、破るとトロリと黄身がとろけてきそうな目玉焼き、パリッと瑞々しいレタスにツヤツヤ光るカットされたトマトが綺麗に盛り付けられていた。
「さ、朝御飯にしようか。って、もう10時だけど」
クスクス笑う小夜は、いつもの小夜となんら変わらなくて、とても昨夜の艶かしい彼女とは別人のようだった。
「あれ、松本は泊まったんじゃないのか?」
俺がアイツの名前を出すと、小夜は一瞬俺から目を反らした。
「あ、う、うん。タクシーで帰ったよ? 翔平が酔っ払って寝てからすぐに」
帰った……?
小夜の言葉に眉を潜める。
確かに俺は、小夜と松本の会話についていけなくて、酒ばかりを飲んで、そのまま潰れてしまった。
でも、喉が渇いて目が覚めた時に小夜と松本はまだガールズトークをしていたはずだ。
午前1時をまわっていたと言うのに元気だなあって思ったから間違いない。
そしてガールズトークはドンドン過激になって……、そして……。
ハッと我に返り布団を剥ぎ取り、自分の服を見てみた。
そうだ、俺は小夜が松本にイタズラされる様をこっそり覗きながらオナニーをしたんだ!
徐々に記憶が晴れ渡っていき、青ざめていく。
自分のヴァギナにコンプレックスを持っている小夜を助けてあげるといいながら、散々小夜の身体を弄んだ松本。
指だけで小夜をイカせ、これで終わりかと思いきや。
――小夜さんは、あとニオイと毛深さが気になるんでしたよね。
と言い、またあの悪魔の笑みを浮かべていたんだ。