百合の花、繚乱-8
小夜は放心してるせいか、されるがまま。
いつもの俺なら、松本が小夜にキスをしようもんなら、全力で阻止していたのだが、俺もまた激しい脱力感で何もできなかった。
小夜は、松本と浮気をした。客観的に見ればこういう事実が成立するかもしれない。
でも、止めようと思えばできたくせに、それを“敢えて”しなかった俺。
そして松本に好き放題されている小夜をオカズに、オナニーをしてしまった。
やってくる賢者タイムと共に襲いかかってくる凄まじい罪悪感。
小夜を責める気になんてなれない。むしろ助けてやらないでごめんなさいという気持ちでいっぱいだ。
松本に関しては、不思議と憎しみは沸き上がらなかった。
もちろんムカつくけど、またこういう事があったら……こっそり見てみたいと思う所が正直、ある。
それほどさっきの光景は非現実的で、とても官能的だった。
昨日までは至って普通のカップルだったというのに。
ああ、俺達これからどうなるんだろう。
そう頭を抱えていると、松本が再び小夜の脚を開こうとしている所が姿見に映った。
な、何してやがる!?
心臓をバクバクさせながら様子を伺っていると、松本がサラリと髪を揺らしながらこちらを見た。
松本と、また姿見越しに目が合う俺。
目を見開いて固まる俺に、彼女はニヤリとまた笑いかけた。
また、背筋が凍りつく。
「里穂ちゃん……?」
小夜が不安そうに松本の顔を見上げると、彼女はまたニッコリ愛くるしい笑顔を見せた。
そして――。
「小夜さんは、あとニオイと毛深さが気になるんでしたよね」
と、猫撫で声を出しつつ、獲物を捕らえた狼のように赤い舌をペロリと出した。