約束♭-2
「えっ、だって、あの事は内緒のはずだよね? だっ、誰に?」
小学生相手に、どもりながら聞き返す自分が情けない。
「さっきの子」
事も無げに汐莉は、そう言いのける。
「さっきって、あの子? あの子って言えば、あの子は何処に行くの? 今日は3人でT.D.L.に行くはずだよね」
訝しげに、俺は尋ねた。
「美里亜ちゃんは、今日先生と……」
(おっと、出たぞ、キラキラネーム!)
そう俺は心中にて毒づく。
(まぁ、それは良いとして先生?)
「先生って?」
その言葉に一瞬躊躇いを感じつつも、念を押すかのように聞き返してみる。
「教育実習の先生、美里亜ちゃんは、教育実習の先生と付き合っているんだよ。それで今日は、先生と……、その……」
先程まで饒舌だった汐莉が、急にそこまで来て口籠る。
「ははっ、先生とね」
そこまで来て、流石の俺も概ね察しがついた。
(仮にも教職を目指す者が教え子と交際。それも小学生相手とは世も末である)
「あのね、学校で美里亜ちゃんにミルクのお話したら…… 美里亜ちゃんも、いっぱい、いっぱい先生から……」
そこまで言うと汐莉は顔を赤らめて言葉を詰まらせる。
「お兄ちゃんの言っていた事、本当なんだね。だから美里亜ちゃん、あんなに綺麗になって…… きっと恵利子お姉ちゃんも、いっぱい、いっぱいミルク飲ませてもらって綺麗になったんだね」
突然汐莉が口にした姉の名に、俺の心は凍りつく。
恵利子が見知らぬ男に抱かれている事を改めて認識させられる。
(しかしそれにしても、酷い教育実習生も居たものである。いっぱい、いっぱい、飲ませて貰っていると来たもんだ)
もっとも先程の大人びた少女ならその気持ち解らなくも無い。
あの少女相手なら、俺自身自制出来る自信が無い。
それだけ同乗していた汐莉の同級生は、大人びて魅力的であった。
「お兄ちゃんっ、さっき美里亜ちゃんの事エッチな目で見てたでしょっ」
どうやら汐莉は俺がルームミラー越しに送っていた視線に気付いていた様である。
頬を膨らませ、拗ねる表情が何とも愛らしい。
「もう、みんな何で美里亜ちゃんばかり」
先程まで仲良さそうに話していた時とは表情が一変する。
小学生と言えでも、女同士の関係は複雑な様である。