『幸せの道』-1
3月といえば卒業の時期だ。私はいつも思い出す。
私は,山路蜜華(やまじみつか)17歳。私の生涯忘れられない最初で最後の恋の話です。
私は当時受験生になったばかりの14歳の時,受験生であるため学習塾へ通っていた。そこは学年が変わるごとに担当の先生が変わるため,人見知りがはげしい私にとって,嫌な日だった。
私は深呼吸をして重たい入口のドアを開けた。するといつもの先生が『こんばんは』と挨拶をしたので私は少し気持ちを落ち着つかせ平然を装い明るく挨拶をした。(なんだ,先生変わらないんだ)と思い,安心して友達と話をしていたら,聞き覚えのない声が聞こえた。
私は恐る恐る後ろに目をやると爽やかな感じの男が他の先生と話をしていた。それが出会いの始まりだった。
彼の名前は春日慎也(かすがしんや)年齢は20代前半で数学担当のとても優しい先生だった。そんな春日を私は気に入り,授業後も残り,たわいのない話をしたり,勉強を教えてもらっているうちに恋愛感情を持ってしまっていた。
友達も私を見て分かっていたのか「頑張れ〜,応援するよ」などと背中を押してくれた。また他の先生も私のことを知っていた。
私はいつものように残っていた。
「ねぇ〜先生って彼女いるの?」と私は疑問に思っていたことを勇気を出して聞いてみた。
「さぁ?」などと春日はごまかす。
私は少し腹がたち「ちゃんと答えろ〜春日ぁ!」と冗談を言い,笑いあったりしているうちにもう11時を回っていたため帰ることにした。私は離れたくなかったが春日に何回も帰るよう言われたため渋々ドアを開け外にでた。すると後ろから勢いよく春日が荷物を持って私のもとへ来て「送るよ。一応お前も女だし悪趣味なやつもいるから。」と笑いながら言ってきた。
「はぁ!?どういう意味よ!?」と私が頬を膨らませて言うと,笑いながら私の前を歩いて「行くぞ」と家の前まで送ってくれた。私にとってそれは幸せなときであり,時間が止まればいいのになどと心の底から思っていた。そして春日への思いは強くなっていった。
−しかし,その日以来私の幸せは崩れていった。それはある日学校でおきた。
「蜜華!!聞いた?!」と私のことを応援してくれていた美紀が凄い勢いで私のもとへ飛んできた。
「なによ〜,急に。なんかあったの?」と何も知らない私は聞いた。
「春日が…」と春日の名前がでたため私は反応した。
「だからなに?!」
「私達が卒業する時に先生やめて…結婚するんだって…」
「え…」
『結婚』と言う言葉が心のなかで響いた。私は動くことも忘れて,黙って美紀の顔を見ていた。
「結婚…?」
私はなにを浮かれてたんだろう…
なんで知らなかったんだろう…そんなことを知ってもどうしてこの思いは消えないんだろう…
その夜私は涙が枯れるぐらい,ずっと泣いた。
卒業まで,もうあと2ヶ月もなかった。こんな気持ちで春日とどんな風に話したり,どんな顔で話ができるんだろう…
闇の奥深くへ落ちた気分になった。
でも時間は止まらない。
今日も塾へ行かなければいけない。あんなに好きだった春日の笑顔を見るだけで涙がでそうだった。大好きな笑顔を見るとせつなく心が痛かった。
「卒業までは,好きでいていいよね?」
そんなこと言わなくても止まらない思いを,その言葉でごまかした。