各務家の過去-4
優子の顔に湯気が立ち上った。
「もう!そればっかりなんだから!いいわよ!したらいいんでしょ、したら!」
「そうこなくっちゃ♪」
陽子は嬉しそうにビデオを構えた。
優子がプンプンしながらガラスの扉を開けて中に入ろうとしたが、陽子が呼びとめた。
「待って」
「なんですか!」
「そんなにプンプンしたらダ〜メ、可愛い顔が台なしよ」
「もう、一体なんなんですか」
ガラスの扉の取っ手を握りながら、優子はモジモジした。そろそろ限界が近づいていた。
「そうねえ、折角だから全部脱いじゃいましょう」
「バカ―――ッ!」
真っ赤な顔をしながら、優子は乱暴に服を脱ぎ始めた。脱いだ衣服は洗面台の横の棚にある脱衣かごに入れた。下着はチョットお漏らしをしたのがばれないように気を使って脱いだ。その様子を陽子は楽しそうにビデオに収めた。
全裸になった優子は、最後にスカートの下に下着を隠してトイレに入ろうとした。しかし、陽子がそのスカートにビデオを向けながら、汚れた下着を引っ張り出そうとしているのが見えて、優子は慌てて下着をひったくった。
「もう、見ないでよ」
限界が近い、優子は下着を手に持ちながら広い個室に急いで入った。
ガラス製の便器の前には何故か斜めに立て掛けられた鏡が置いて有ったが、今はそれを気にする余裕は無かった。
(これって冷たそう…)
優子は冷たそうに見えるガラス製の便座を前に一瞬躊躇したが、目をつむり思い切って座った。しかし便座に通った細い熱線によって、丁度良い温度に調整されていたのでホッと一息ついた。
しかしそれも一瞬の事。座ったことでセンサーが働き、便器の周りの床に備え付けられたライトが灯って、まともに股間を照らし出した。
目を開けた優子の目線にさっきの鏡が入った。その鏡にはライトアップされ、尚且つガラスの局面で拡大された自分の卑猥な部分が映されていた。
「な、何よこれ!エロ陽子!あんた一体どんな神経してんのよ!」
驚きで尿意が一瞬止まった優子は陽子を睨んだ。
「そこで自分のおしっこを見るのが好きなの」
ビデオを構えた陽子は下着の中に手を入れて、秘部を弄りながらモジモジと恥ずかしそうに答えた。
「変態変態変態――――っ!」
よくこんな工事を業者に発注したもんだ。こんな人種が知り合いだと思うと恥ずかしくて仕方がない。
(こんな変態に絶対にならないぞ!)
優子は決意を胸に極力卑猥な部位が見えないように内股になり、太ももの上に下着を置いて股間を隠した。そして真っ赤になった顔を手で覆って上体を屈めて放尿姿勢を取った。
「待って、それじゃ誰がおしっこしてるかわからないでしょ。それに肝心なおまんこが見えないじゃない」
(な、何言ってるのよ!)
その理不尽な陽子の要求に、優子はついにブチ切れた。
しかし、優子は内面に湧きたつグラグラした怒りを出さないようにした。一旦座った便器から腰を上げると、ビデオカメラを構える陽子に近づき、ガラス扉を開けてニッコリと微笑んだ。