うちの愛猫-9
だけどあたしのお叱りに驚いた顔を見せたのは、メイじゃなくなぜか久留米さんだった。
「メ、メイって……」
「ああ、この子の名前です。
トトロからとったんだけど、可愛いでしょ?」
「…………」
久留米さんはびっくりしたまま、膝の上で体を丸め始めたメイを凝視していた。
そんな彼のことなどお構いなしに、いよいよくつろぎ始めたメイに、あたしは、
「ほら、降りなさいってば!」
と、彼女の体を引き離そうとするけど、わざと爪を出して久留米さんのジーンズに引っ掛けて剥がされまいと踏ん張っている。
「メイ、どうしたの、初めて会った人の膝の上に乗るなんて真似、絶対しないのに!」
何度も家に遊びにきたことがある塁ですら、やっと姿を見せるまでになったっていうのに、初対面で膝にのるなんて考えられない。
「あー、少しだけならこのままでいいよ」
久留米さんはそう言うと、再びソファーに深く座り直した。
「本当にすみません……。
何でだろ、よっぽど久留米さんのこと気に入ったのかなあ」
あたしは眉をひそめながらメイを見やるが、彼女は目なんか閉じちゃってすっかり寛いでしまっていた。
そんな彼女の背中を、久留米さんは恐る恐る撫でた。
気持ち良さそうに、ゴロゴロ喉を鳴らすメイ。
久留米さんはメイのそんな様子に目を細めると、
「メイ、お前可愛い名前つけてもらったんだな」
と嬉しそうに呟いた。