名器-1
3
玉座につづく階段の下。
そこで私は、背後からの手コキにさらされていた。
「あら、最初の威勢はどこにいったのかしら…?」
呆れたような声で、女王は淡々と、それでいて的確に私のペニスを責めてくる。
――こんな簡単に背後をとられるなんて。
私だって、これまで数えきれないくらい魔物と‘戦って’きた。
いかに間合いをはかって有利な体勢に持ち込むかが、勝敗を決するのもよく分かっている。
でも淫女王は、玉座に腰かけて私を見下ろしていた次の瞬間、私の背後に現れていた。
あっさりと背後をとられて動揺する私に、女王の‘淫気’が襲いかかる。
ピンク色のもやのように濃い淫気にあてられて、ペニスが一気に限界まで大きくなる。
そして、こみ上げる快感に思わず前かがみになった私をあざ笑うように、女王はゆっくり、そして優しく、背後から抱きすくめてきた。
背中にやわらかな胸の感触が伝わる。
そしてすぐ真後ろにせまった女王の肢体(からだ)から、かぐわしい雌の匂いがたちのぼって、私の鼻腔をかすめた。
その香りと感触に一瞬我を忘れた私は、無防備に大きくしたペニスを、あっさり女王の手に握られてしまう。
(ぁっ・・・なに、これっ…?)
白くて綺麗な指がペニスに巻きつき、優しく握りこむ。
(まだ動かしてないのに・・・気持ち、いい…っ)
すべやかな肌がペニスにしっとり吸いついて、軽く握られているだけなのに、まるでそこから快感が染みこんでくるみたい。
思わず淫女王に体をあずけてしまうと、背中には大きくてやわらかい乳房の感触が。
我慢できずに快感の吐息を漏らすと、吸いこんだ息には女王の甘い香りが。
(ぁ、ん・・・こんな、すごいなんてぇ・・・・)
淫女王の体と香りに包まれて、もはや私に反撃の意志は残っていなかった。
ともすれば自分から腰を振って、女王の手にペニスを擦りつけたくなる衝動を必死でこらえる。
「何を我慢しているのか知らないけれど。私はまだ責めてもいないわよ?」
悶える私に、淫女王が冷たく言い放つ。
(ダメっ…!なんとか…反撃っ、をほおっ!?)
無機質に動きだした女王の手が、私の決意を簡単にうち崩していく。
(あっ、あん・・・なんで?こん、なにっ…イイのぉ・・・っ)
機械的に扱くだけの、テクニックも何もない手コキ。
のはずなのに、女王の白くて綺麗な手がペニスを上下するだけで、天にも昇る快感が突き抜ける。
手に‘名器’があるのなら、まさにこれがそう。
技術など使わなくても、ただ包むだけで先走りをあふれさせ、ただ扱くだけで精を搾りとる。
(あ、あ、あぁ・・・こんなの、むりぃ・・・・っ)
私がそう理解する間も、女王は淡々と手を動かしつづける。
そしてそう理解したところで、もうどうする事もできなかった。
「…貴方は、淫女王の手コキを味わうためにここに来たのかしら?」
淡々と‘作業’を続けながら、淫女王が呆れたように言う。
「違う」という抗弁は、頭の中で快楽に押し流されて言葉にならなかった。
「・・・そんなに溜まっているなら、人間の‘風俗’にでも行って、相手をしてもらえば良かったのに。淫女王たる私を売女がわりに使うなんて、いい度胸ね…?」
女王はそれきり黙って、また淡々と‘作業’を続ける。
私は使命も目的も忘れて、この世で最も代償の高い‘売女’の、極上の手コキに酔いしれていく。