花火に舞う乙女恋心-4
俺は戸惑っていた。
子供のころの記憶が曖昧なことで玲奈と由利に今後キズをつけてしまうのではないかと。
「なぁ、匠。記憶が曖昧なら・・うちと・・って」
「ごめんっ 今、何ていったの?」
「うちと付き合ってくれへんか?」
次の瞬間、由利は俺と唇を重ね合わせると同時に花火が鬼怒川の方から夜空に舞い上がる。
「・・・ちょっと、匠?何してるの?」
その声は玲奈の声だった。
「玲奈!違う、これはその理由はあって!」
「玲奈?玲奈か久しぶりやな。」
「えっ?誰なの?」
「うちや、暁由利やで」
玲奈は由利を見てまぶたに涙をためて罵声を浴びせる
「何よ!今さら帰ってきて匠を奪いに来たわけ?」
「せやで。うち、あきらめきれんのや」
「馬鹿を言わないでよ!今の彼女は私よ!」
「でも匠は記憶が曖昧で約束の事は覚えとらんで」
俺は状況が飲み込めずにたたずんでいると玲奈は無理やり俺の手を引っ張って連れていく。
「・・・玲奈、うちはあきらめへん」
「こいつはオタクよ。それでも?」
「そんなん関係ない」
「じゃ、勝手にすれば!ふん!」
そして玲奈は俺を連れて神社を後にして近くの公園くると、いきなり抱きしめてキスをしてきた。
「・・・ん、玲奈?」
「んんっ」
玲奈は大胆にも小さな舌を絡めながら俺の唾液をすくうように飲み込んでゆく。
あまりの舌づかいに興奮する寸前で唇をはなす。
「匠」
「何?」
「由利の唾液を私が全部取り除いたわ」
「ごめんっ でも俺は玲奈だけだから」
「全く、何人恋のライバルをつくるつもりよ」
「何人もいないだう?」
「鈍感!女の子は匠が思うほど容易くないわよっ」
後に玲奈が言ったその言葉が痛いほど実感する時がくることをまだ知らなかった。
そして夜の花火大会で現れた最強の恋のライバルが2学期を向かえて玲奈と俺の仲を取りまいてゆく。