垣間見える過去-17
ここからあたしの家までは、タクシー使ったってワンメーターの区間だし、薄給のあたしには必要のない代物だ。
なのに彼は少し険しい顔をして、
「ダメだって、タクシー使えよ」
と、食い下がってきた。
ちょ、ちょっと怖いんですけど……。
「え、ホントに近いからかえってタクシーの運転手さんに迷惑かけるし……」
そんな彼の様子に怯みつつも、やんわり彼の勧めを断ると、久留米さんは小さく息を吐いてそっと左手首を離した。
そして彼はポツリと、
「じゃあ家まで送るから」
と言ってあたしの横に並んだ。