垣間見える過去-14
結局、あたしの方もそれっきり塁の話はしなくなり、あとはいつも喫煙室でするような他愛のない会話をしていた。
こういう下らない話だと、割とスムーズに話せるようになったのは、初めて会った時に比べたら大きな進歩だと思う。
でも、こうして話をするようになって受けたのは、やはり副島主幹の言うとおり、昔は明るかったんだろうなと言う印象。
話す内容も時折ユーモアがあったりで聞くだけで楽しかったし、何よりおしゃべりしてくれる時の彼の活き活きした表情が、あたしの心のどこかを疼かせた。
「……なんかすいません、あたしが誘ったのに」
8時を少しまわった所で、あたし達は店の暖簾をくぐり抜け、外に出た。
ジメッとしたぬるい空気が一気に肌にまとわりつく。
あたしが謝ったのは、久留米さんが全部会計を支払ってくれていたから。
彼は何度もお金を差し出そうとするあたしを制し、
「普段どこにも出歩かないから金の使いどころがわかんないんだ。
若い娘と一緒に酒も飲めたし、これはお礼ってことで」
と、ニヤリと笑った。