垣間見える過去-12
ただハッキリしているのは、塁の望む世界にも久留米さんの望む世界にも、あたしは存在していないってことだけ。
そう考えるとたまらなく悔しくなってきた。
塁の知らない世界を作りたくて、久留米さんとこうして会ったけど、結局一人ぼっちだということを再認識させられただけだった。
無意識のうちに苦虫を噛んだような顔になっていたのだろうか、微妙に気まずくなっていた雰囲気を変えるかのごとく、久留米さんは少し明るい声で、
「まあ、宗川さんもその彼だけじゃなく、他に目を向けて見たら?
なかなか美人なんだし、彼氏作ろうと思えばきっとすぐできるって」
と、冗談めかして言った。
その口調がやけに軽いせいか、あたしは余計に惨めになって俯いた瞬間、おばちゃん店員が
「お待たせしました」
と、ようやく巨峰サワーをテーブルに叩きつけるようにドンッと置いた。