酔ったフリして-12
「ったくもう......しっかりしてくれよ......」
梓さんは頭を抱えていた。
待ち合わせの場所に着くとみんな揃っていた。俺はマイクロバスに案内され乗り込むとメイクさんとスタイリストさんが近づいてきた。
「あっあの......」
「大丈夫!ちゃんと話は聞いているから!」
「これで男だってっていうんだから......女の自信無くすよね......」
「ねぇ?純君?ムダ毛の処理ってどうしてるの?」
「別に何もしてませんけど......元々薄いほうなので......」
「羨ましいな......私なんか夏が来るのが憂鬱だっていうのに......」
「そうそう!」
俺は彼女達の会話についていけずに苦笑いを浮かべるしかなかった....
鎌倉に着いて撮影が始まった。なれない事で戸惑う事も多かったがスタッフさん達のおかげで順調に進んでいた。梓さんは雑用で飛び回っていた。
「30分休憩です!」
夕方近くになってやっと休憩時間になった。
「お疲れ様!」
カメラマンさんがそう言って近づいてきた。
「お疲れ様です!」
俺はメイクを直してもらいながら答えた。
「疲れているところ悪いんだけど....雑誌の撮影とは別に撮らせて貰っていいかな?」
「別にいいですよ!」
撮影の影響で気分がハイになっていた俺は躊躇わずに答えていた。
「お疲れ様です!」
無事に撮影が終わり、帰りのバスの中で梓さんが
「頼む!」
両手を合わせて頭を下げていた。雑誌の撮影とは別に撮った写真をポスターとかで使いたいとの事だった。
「そういう事ならなんでもっと早く言ってくれなかったんですか?」
「ゴメン....私も今聞かされたんだ....」
「そんな......」
俺が首を縦に振るのを渋っていると、梓さんは顔を近づけて
「昨日いい思いしただろ......私......初めてだったんだぞ......」
そう耳打ちした。俺が梓さんを見つめると梓さんは恥ずかしそうに下を向いた。
「わかりました......」
俺が漏らすと
「本当?」
潤んだ目で見つめられると否定出来ず
「うん......」
俺は頷くしかなかった。
「部長!OKです!」
梓さんは右手でOKマークをして合図した。
「梓さん?」
梓さんはイタズラがバレてしまった子供のような顔で
「ゴメンな......女には気をつけろよ!」
そう言って笑った。
「梓さん!」
後悔しても後の祭りだった。
それから二週間後、梓さんの会社の窓に大きな俺の女装写真が張り出された。た。