広がる不安-2
「おい!昼飯食べに行こうぜ!」
拓弥が誘いに来た。
「悪い先約があるんだ!」
その時、姫川さんが話しかけてきた。
「葛城君!笑美ちゃんが来たよ!」
「わかった!」
姫川さんに答えてから
「それじゃあ....そういうわけだから!」
俺は拓弥にそう告げて笑美ちゃんの所に歩いて行った。
「お待たせ!それじゃあ行こうか!」
「うん!」
俺達は三人で歩き始めた。
「どこで食べるの?」
笑美ちゃんが聞いてきた。
「今日は寒いからなぁ....」
俺が悩んでいると
「それじゃあ....家庭科教室で食べましょう!」
姫川さんの提案に
「いいのかな?」
笑美ちゃんは少し躊躇ったが
「実は....先生に許可をもらっているの....」
姫川さんがそう言ったので「えっ?ウソ....」
驚く笑美ちゃんに
「一応....調理クラブの部長をしてたから....先生から信頼されてるっていうか....」
「それじゃあ....姫川さんは先生を騙して....」
「ちょっと!葛城君!人聞きの悪い事言わないで!せっかく温かい物を食べてもらおうと思っていたのに....食べたくないの?」
「そんな事は......」
笑美ちゃんは俺達の話を聞いて笑っていた。
姫川さんと笑美ちゃんは家庭科教室で準備してきた物を温め直した。
「これ、先生に届けてくるね!」
姫川さんが教室を出て行こうとした。
「えっ?」
「つ・け・と・ど・け!特別に許可をもらっているから!」
姫川さんは俺達にウインクして出て行った。さすがに抜け目がないな....と俺は感心した。
姫川さんが戻ってくると
「さあ食べようよ!」
笑美ちゃんが並べてくれた弁当....というよりファミレスのランチセットを食べ始めた。寒い日だったので、二人が用意してくれた温かいシチューはありがたかった。
「美味いな....これ!」
素直な感想を言うと、二人は嬉しそうに笑って
「おかわりはまだあるからいっぱい食べてね!」
笑美ちゃんが言ってくれた。その時、携帯がブルッた。携帯を見ると梓さんからだった。
「梓さん?何だろ....」
俺が不思議そうな顔をすると二人は顔を見合わせて笑った。
「ハイ....」
電話にでると
「葛城さんのお電話ですか?」
改まった梓さんの声がした。
「へっ!?」
驚いていると
「私、城崎と申しますけど....純さんですよね?」
梓さんでないような言葉が続いた。
「どうしたんですか?」
すると小さな声で
「今は、私用じゃなくて仕事の電話なんだ!部長が傍にいるから....」
「城崎君!」
電話から男の人の声が聞こえた。
「申し訳ありません....」
梓さんは誰かに謝っているみたいだった。
「梓さん?」
「あっ..あの....今度の日曜日....何かご予定はありますでしょうか?」
「別にありませんけど....」
いつもと違う口調に俺は戸惑っていた。
「それでしたら....今度の日曜日に鎌倉で撮影があるのですが....モデルを引き受けてもらえないでしようか....」
「えっ!モデルって....まさかまた女装....」
「ハイ....詳しくはお会いしてお話を....」
「お断りします!」
「そうおっしゃらずにお話だけでも....」
「お断りします!」
俺はそう言って電話を切った。
「どうしたの?梓さん何だって?」
姫川さんが興味深そうに聞いてきた。