それぞれの世界-3
久留米さんが他の誰かを想っていると想像しちゃうと、あたしは決まって塁に連絡をとっていた。
久留米さんには久留米さんの大切なものがあるように、あたしにはあたしの大切なものがあるって、誰に言うわけでもないけど、そうやって自分を納得させたかった。
そうでもしないと、自分が間違った方向に進んでしまいそうだったから。
だからあたしは塁に会って、抱いてもらって、再確認する。
あたしが好きなのは塁だけなんだって、心と身体に刻みつけて欲しいから。
今までのあたしなら、そんな確認なんてしないでも無条件で塁を好きだと言い切れていたのに、どうしてか塁を好きだと暗示をかけるようになっていた。
……だって、そうしなければ。
気付けば、仕事中だというのに横目で久留米さんの姿を追ってる自分がいて、喫煙室で話をすれば声が高くなってはしゃいでいる自分がいる。
まるで自分が自分じゃなくなっていくようで、ふと怖くなってしまった。
だからといって、久留米さんとの繋がりは今さら断ち切りたくなんかない。
自分がどうしたいのかよくわからないまま、あたしは毎日を順調に過ごしていた、つもりだった。