それぞれの世界-19
「元彼って、『モナリザ』の彼?」
「ちょっと、まだ誤解してるんですか?
あたしは『モナリザ』なんて行ってないです!」
人が泣いてるってのに、この人はなんでそんな茶化すようなこと言うの!
嘘を突き通すつもりで、ジトッと恨めしそうな視線を彼に投げかけるけど、久留米さんは見透かしたようにフッと笑うだけ。
塁が他の女の子と一緒にいるのを見て悲しいはずなのに、なぜかその笑顔を見た途端、胸が締め付けられてしまったような気がした。
「ああ、悪かった」
小さく笑いながら謝る久留米さんを見てると、どうしようもなくすがりたくなってくる。
「あたし……自分の何が受け付けてもらえないのかわからないんで、すごく辛いんです。
だから、男の人の意見も聞きたくて……。
やっぱり相談にのってもらうのは迷惑ですか……?」
図々しいとは思うけど、時折見せる彼のこういう表情に、本当は優しい人なんじゃないかという確信めいた思いがあったから、あたしは勇気を振り絞ってそう言った。
それに、今も塁があの娘と一緒にいるなら、このまま一人になんてなりたくない。
……あたしだって、塁以外の世界を作りたい。