裕樹の部屋で-1
【裕樹の部屋で】
帰宅後、夕食の時やテレビを見ている時に、結衣がチラチラ裕樹の様子を見ながら、真弓のことを切り出す切欠を窺っていたが、なかなかそのチャンスも無いまま裕樹は自分の部屋に戻ってしまった。
「ああん、どないしょ、真弓には今日聞くって約束したのに…」
真弓からは彼女の有無を確認した結果、裕樹に彼女が居なければ真弓を売り込むことも約束されていた。
それに明日は土曜日だ。授業も無いし、硬式テニス部もサッカー部も午前中の練習だけなので、午後から真弓を正式に紹介するために、裕樹をお茶に誘うように言われていたのだ。
裕樹が自分の部屋に入ったので、結衣も仕方なく自分の部屋に戻った。
「ふう…」
ベッドの上でため息を漏らしながら、しばらく悶々と考えていたが、裕樹のことで何故自分が悩まないといけないのかがバカらしくなり、段々と腹が立って来た。
「アホらし!なんであたしが裕樹のことで悩まなアカンの?」
結衣は思い切ってベッドから飛び起きると、隣にある裕樹の部屋に向かった。
「裕樹、起きてる?」
ノックもしないまま結衣が扉を開けると、そこには驚くべき光景が繰り広げられていた。
「ひっ…」
そこにはベッドの上に寝転んでいた裕樹が、パジャマのズボンをトランクスごとずらして、左手に持つスマートホンを見ながら、右手でイキリ勃ったモノを扱いている最中だったのだ。
耳に刺さったイヤホンの音と、やや扉に背を向け気味の姿勢で扱いていたことで、結衣が入って来たことに裕樹は気づいていない。
ズリュッズリュッ。結衣の目に映るリズミカルな動きは、そんな音が聞こえてきそうだった。
この時、直ぐに結衣に気づいて慌てて裕樹が自慰行為を中断すれば、結衣も慌てて扉を閉めただろう。しかし見られていることに気づかずに、大胆に扱いている光景(特にモノ)に目を奪われた結衣は、金縛りに有ったように体が動かなくなっていた。
「うっ、ううっ」
やがて裕樹にその時が来た。手にしたスマートホンを置き、横に置いたティッシュボックスから2,3枚のティッシュを抜き取ると、それを勃起するモノの前に持っていって飛び出す精子を受け止める準備をした。
「うううっ」
裕樹のくぐもった呻き声と共に、イチモツの先から白濁した液体が勢いよく飛び出した。最初の発射は裕樹の予想を上回り、用意したティッイシュを飛び越えてベッド横の壁にベチャリと届いた。その凄まじい勢いを見た瞬間、結衣は前のめりになってゴクリと生唾を飲み込んでしまった。
自慰行為に夢中になっていた裕樹も、さすがにその気配を察した。気配の先に結衣の姿を認めた裕樹はパニックになった。
「うわっ、な、何見てんねん!勝手に入ってくんな!」
この時、この言葉で止まっていたら、結衣も「ゴメン」と言って慌てて扉を締めたであろう。しかし、慌てながらズボンを穿きつつ、この後に吐いた裕樹の言葉がいけなかった。
「このエロ女!」
この言葉に結衣はカチンときた。最近では滅多に裕樹に対して怒りを覚えなかった結衣だったが、驚きの余りに自分でも気づかない程に気分が昂っていたようだ。
「誰がエロ女や!」
久しぶりにスイッチの入った結衣はそう言いながら、ずかずかと部屋の中に入り、ベッドの上のスマートホンに手を伸ばして、映っている動画を見た。
そこにはエロサイトの動画が映っていて、挿入している部分のアップが流れていたのだ。
「うっわ、何やのんこれ?やっらしい。こんなん見てシコシコしてるあんたの方がエロやんか!」
「アホ、返せぼけ!」
裕樹が手を伸ばしてスマートホンを奪い取ろうとしたので、結衣は反射的に取られないように、それを体の後ろに回した。するとその拍子にイヤホンのジャックが抜けてしまった。