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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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ナンパ野郎-5

若い女に声をかけてくるのは大抵キャッチかナンパだ。


あ、そういえばキャバやモデル、はたまたAVのスカウトなんかもあったなあ。


とにかく、都会の人の波を歩いていると声をかけられることなんてしょっちゅうだ。


――くるみは綺麗だから、声をかけてくる男なんてたくさんいるから、とにかく無視するんだぞ。


耳にタコができるくらい聞いてきた彼氏の注意。


でも、田舎から上京してまだ一年もしなかったあたしには、そんな社会人の彼の言葉は絶対的で、忠犬のようにそれは守られるべきものだった。


だから今回もいつも同様、わざとパンプスをカツカツ鳴らしながら歩くスピードをあげ始める。


キャッチだろうがナンパだろうが、声をかけてくるのにろくな奴はいないから。


いつものように聞こえない振りをしつつ、このごった返す人の波に紛れてしまえば、逃げられるはず。


「すいませんってば」


あたしのかなりの早歩きに、アルトボイスの声も少し慌てた口調になる。


数歩遅れて男がついてくる気配を背後で感じるから、ついてきてるんだろうな。


すれ違う人達もチラチラとこの妙な追いかけっこを見てるみたいだし、いよいよ恥ずかしくなってきた。


あー、ウザいな。どうやって巻こうか。


歩きながら考えていると、車道を挟んだ前方左側にデパートが見えた。


よし、あそこに入ろう。


狙いを定めたあたしは、タイミングよく青信号になっている横断歩道に向かって小走りした。


あたしが渡ろうとしているのは、片側三車線ずつの広い通りだ。


車道と車道の間には、遊歩道を兼ねた銀杏並木があって、このシーズンは裸になった銀杏にたくさんの電球が巻き付けられている。


道路沿いに並ぶ銀杏のイルミネーションは、カップルにとってそれはロマンチックなデートスポットとなっている。


あたしは元陸上部の自慢の脚力で、すでに横断歩道の半分――銀杏並木の遊歩道まで一気に駆け抜けた。


よし、残りを渡ってサッサとデパートに逃げれば完璧だ。


並木を見上げながら歩くカップルをチラリと横目で見ながら、残り半分の横断歩道を渡り切ろうとした、その刹那。


「待ってって!」


男のものと思われる長い指が、あたしの腕を掴んでいた。






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