ナンパ野郎-3
「ああ……もう、いやあ……」
そして、恥ずかしさのあまり両手で顔を包む振り。
どう? これで満足でしょ?
恥じらいつつも相手の望んだ通りに淫語も口にしたし、これで完璧なはず。
なのにススムは、あたしの手首を掴むと顔から剥がしてグッとシーツの上に押さえつけた。
目の前には相変わらず薄ら笑いを浮かべるススム。
その、男にしてはぽってり厚い唇がニッと三日月みたいに歪んだかと思うと、
「え? 声が小さくて聞こえねえんだけど」
と、底意地の悪い声で、あたしの耳元に囁いてきた。
……ウッザ!
一回言えば充分じゃん!
思わず鼻白んだ顔で、ススムを見上げたけれど、奴は全く気付かない。
それどころか、あたしがもう一度恥ずかしい台詞を言うのをニヤニヤしながら待っていた。
もう、一気に興ざめだ。
ススムがナンパしてきた時、服も髪型もそこそこお洒落だったし、顔も身体つきも及第点で、身体の相性もよさそうだったのに、思いも寄らないところで出た拒絶反応。
気持ちが一気に萎えたあたしは、覆い被さっていたススムの身体を思いっきり跳ね除けると、ダルくなった身体をむっくり起こした。
全身舐められたせいか、ススムの唾液の臭いがふわりと立ち上って、思わず眉間にシワが寄る。
「あー、んじゃいいや。もう止めよ、帰る」
「えっ? ええ!? ちょっと待って!」
突然のあたしの豹変した態度に、ススムはまるで鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔であたしを見た。
「言わなきゃあげないんでしょ? あたしもう言うつもりないから、無理してシてくれなくていいよ」
ニッコリ笑って、床に落ちている服に手を伸ばすと、ススムはあたふたしながらあたしの手首をガシッと掴んで、猫撫で声を上げた。
「ご、ごめん! ちゃんと聞こえてたから怒んないでよ」
突然弱気になる態度に、一層興ざめだ。
ご機嫌とるんなら、最初っからSぶるなっての。
イラッとしたあたしは、馴れ馴れしく掴んできた手を思いっきり振り払ってやる。