「しちゃう?」-3
千香ネエは毎朝学校へ出かけて夕方汗びっしょりになって帰ってくる。部活も事実上引退しているから本当は休みなのだが、後輩のコーチ役として練習に加わっているらしい。
「自分のトレーニングも兼ねてやってるんだ」
夏休み中、ほとんど休みなく続けるようだ。すごい体力だなと思う。しょっちゅう体を鍛える話をしているが、ストイックなわけではない。何かとさばけているし、たまには隠れて酒も飲んでいるみたいだ。
(去年みたいに酔って眠ったら……)
また触る機会がこないものか。
そんな淫らなことを考えながら日が過ぎていった。
四日目の夜、シャーペンの芯を切らしていることに気づいた。ストックが一本もない。明日は小論文の模擬テストがある。
(朝、コンビニで買うか……)
ちょうど風呂から上がった千香ネエが部屋に戻ったドアの音がした。
(持ってるかな……)
あまり勉強しなくてもシャーペンくらい持ってるだろう。
ドアをノックした。
「千香ネエ、シャーペンの芯ある?」
「ああ、あるよ。入れよ」
ドアを開けて思わず、
「あ……」と声をあげた。
上半身裸なのである。そして下はパンツだけ。……
「何、してるの……」
やっと出たぼくの言葉である。
千香ネエは平然としている。
「何って、扇風機に当たってるんだよ」
大変なものを見ている。……
(千香ネエの裸……)
だが、あまりに驚くと却って目を逸らせないものだ。
「そこの引出しにあるよ。何ミリ?」
「0,5かな……」
「じゃあ、あると思うよ。持ってっていいよ」
腕や首筋が真っ黒に日焼けしているので、なおさら隠されていた部分が眩しいほどに白く見える。
「千香ネエ、色白なんだね……」
部屋に入り、ぼくはその裸体の美しさに見とれながら言った。千香ネエがもし胸を隠したりしたとしたら、ぼくはすぐさま逃げ出したことだろう。
「そうだろう?ほんとはもち肌なんだよ」
胡坐をかいた格好はまるで男である。
豊満な乳房はやや垂れているが、それは重みのせいである。はち切れそうな若い張りをもって膨らんでいる。
「きれいだね……」
言ってから恥ずかしくなった。
「初めてだな、シュウがそんなこと言うの」
ぼくはどぎまぎして、
「いつも男っぽいから……」
「なんだ、褒めてる感じしないな。あたしだって女だぜ」
「わかってるよ。だから、きれいだって……」
背中は引き締まって筋肉がついているが、腰の括れは妖しい腰回りに続いている。
「胸はどう?Dカップ」
いきなり前を向いた。ぷるんと揺れる乳房。
「どうって……」
「形、けっこうよくね?」
「うん……いい……」
「でも、走る時、邪魔なんだよな」
千香ネエの試合は見たことはないが、ブラジャーをしていてもゆっさゆっさ搖れる姿が目に浮かぶ。
「ちょうどいいや。シュウ、ちょっと腰にシップ貼ってくれ。今日ノックしてて捻っちゃった」
千香ネエはぼくの返事も待たずに布団にうつ伏せになると腕を組んで顎を載せ、十八歳の輝く姿態をさらけ出した。
ぼくの股間はもはや息切れしそうになっている。脇からは潰れた乳房が覗いている。大きなお尻にぴったり張り付いたパンツ。薄い生地なので尻の割れ目が薄っすら透けて見える。
(女の体だ……)
「どの辺?」
「右のほう」
千香子は後ろ手でパンツを少し下げた。
ぼくの頭の中は煮え立っているような昂奮状態であった。
引き締まっていてもやはり女の柔肉だ。
(ああ……千香ネエ……)
刺激が強すぎる。抱きつきたい衝動にかられて必死に堪えた。
このままでは突き上がる感情を抑えきれない。
「はい、貼ったよ」
「サンキュー。すーっとする」
ジーパンを穿いててよかったと思った。パジャマだったら勃起をごまかせない。いきり立ってどうしようもない状態である。
「じゃあ……」
「ああ。足のマッサージしてくれると最高なんだけどな」
「うん。……勉強しないと。明日テストなんだ……」
「そうか」
触りたいのはやまやまだったが、そうなったら気持ちも体も暴発しかねない。とても抑える自信はなかった。
「今度……」
それだけ言って退散した。