少しだけ、揺れる-12
「何だ、俺はそういうキャラだったのか」
久留米さんは笑いが止まらなくなったようで、ひたすら下を向いてクックックッと肩を揺らして笑っている。
どうやら怒っているわけじゃないようなので、あたしは恐る恐る、
「……違うんですか?
そういうとこに行ったことないって言うからてっきり……」
と、訊ねてみた。
すると久留米さんはニヤニヤしながら、
「うん、男とヤるのは経験ない」
と、サラリと言ってのけた。
その言葉の意味を考え、しばし固まってしまう。
――男とヤるの“は”ってことは……。
「久留米さん、童貞じゃなかったんですか!?」
あたしは目を丸くして大きな声を上げてしまった。
またまた訪れた、気まずい沈黙。
そして、再び失言してしまったことにすぐさま気付いてしまったあたしは、自分の口を慌てて押さえた。
そんなあたしをジッと見ていた久留米さんは、最初こそ真顔だったものの、しだいに我慢できなくなったようで、とうとう盛大に噴き出した。