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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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少しだけ、揺れる-13

あたしの爆弾発言は久留米さんのツボに入ったらしく、しばらく笑い続けていた。


そしてそれが落ち着いた頃、彼はにやついた顔をこちらに向けた。


「ご期待に添えなくて申し訳ないんだけど、俺ゲイでも童貞でもないんだ」


「だ、だって……ラブホに行ったことないって言ったから……」


「あのね、俺高校卒業してからずっと一人暮らししてたの。

一人暮らししてたら、わざわざそんなとこ行く必要ないでしょ」


もっとも過ぎる正論に、あたしは顔が真っ赤になってしまった。


そもそも文屋さんが変な先入観を植え付けたからこんな恥かいてしまったんだ。
……後で文屋を蹴っ飛ばしてやる。


心の中でそう毒づいてやるものの、もう穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさが勝ってしまい、まともに久留米さんの顔を見れないでいた。


彼はひとしきり笑ってから、


「あー、面白かった。

みんな俺をそんな風に思ってたんだ?」


と、笑い過ぎて目尻に滲んだ涙を拭いながら言った。


あたしはただただ彼に申し訳なくなってしまい、首を勢いよく横に振って、


「……彼女がずっといないって噂があったから、あたしが一人で勝手に誤解してたんです。

失礼なこと言ってすみませんでした……」


と謝った。


すると、久留米さんは一瞬だけすごく悲しそうな顔をした。


その顔にハッと息を呑んでしまう。


でも、彼はすぐにその表情を消し去り、


「まあ、思いっきり振られちまったからな」


と小さく笑って鼻の頭を描いてから、煙草をブリキのバケツに投げ入れた。



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