あたしが欲しかったもの-6
「恵ちゃんってさ、陽介と付き合ってどれくらいになるの?」
「……半年くらい……」
声が震えて語尾が弱くなる恵ちゃん。あなたも薄々感じてたんじゃない?
「そっか、じゃあそろそろかな」
あたしの言葉に、彼女の視線が一瞬こちらに向く。
その視線がちょっとだけ睨んだように見えたあたしは、優越感を抱く。
あたしの存在が、言葉が、この娘を動揺させていると思えば、どんどん気分が高揚していった。
「陽介って彼女ができるとそうやって合わせてあげてるんだけど、どこかで綻びが出てくるのよね」
「綻び……?」
「陽介は優しいし、女の子の扱い方上手いでしょ? だから彼女ができても最初のうちはうまくいくんだけど、だんだん彼女のペースに合わせた付き合い方に疲れてくるんだ」
もう、止まらない。
この娘を思いっきり傷付けてやりたい気持ちと、陽介の本当の姿を知っているのを見せつけてやりたい気持ち、あたしの頭の中はそれだけだった。
あたしだけが陽介のありのままを包んであげられているの。
そう想いを込めて、ひそひそ話をするみたい口の横に手をあてたあたしは、少し声のトーンを落としてこう言った。
「――だから、あたしが疲れた陽介を癒してあげてるの」
その言葉の言わんとしているところを、即座に理解した恵ちゃんは目を見開いて、あたしを凝視した。
そんな彼女に勝ち誇った笑みを見せながら、肩にかかった髪の毛をサラリと後ろに流してやる。
「恋人がいると、だんだんそれが疲れてくるんだって。だって、誕生日、クリスマス、バレンタインにホワイトデー……恋人のイベントはたくさんあるでしょ? 普段のデートだって、やれディズニーランド 連れてけとか旅行いこうとか。アイツ根がめんどくさがりだから、しんどくなってくるのよ。
そうなるのが、大体付き合って半年くらいしてから、 なの」
途端に身体がビクッと強張った恵ちゃん。思い当たるフシでもあるのだろうか。
彼女の顔が曇れば曇るほど、立て板に水のごとく陽介のことが次々と口からついて出てくる。
「彼女と付き合って半年くらいになると、決まってあたしに連絡がくるの、疲れたーって。まあ、女が癒してあげるやり方なんて決まってるけれどね。で、陽介はいつも言うのよ。やっぱりくるみの身体が一番相性がいいって」
陽介だって、いくらカノジョが大事だからって、無理して自分を作る付き合い方よりも、自然体でいられる方がいいに決まってる。