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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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あたしが欲しかったもの-5

「あの、それってどういう意味……」


「ん? 言葉通りのつもりだけど、意味わかんなかった?」


「…………」


そう、恵ちゃんがうまくいってるって思えるのは、陽介が頑張って彼女に合わせてあげてたから。


今までだって、陽介はカノジョのワガママに付き合う形の交際ばかりを繰り返していた。


顔を強張らせる恵ちゃんがなんだか滑稽で、にやけた顔になってしまう。


「陽介ってさ、甘いもの嫌いだし、女の子が好きそうなお店って全く興味ないのよね」


陽介が恵ちゃんを大切にしてる、それはすごくよく伝わってくる。


女関係をバッサリ切って、電話番号やアドレスを変えるくらいだもん、今度こそ真面目に付き合うつもりなのだろう。


……でも。


「え?」


「ああ、知らなかったんだ。それほど陽介は上手に恵ちゃんに合わせてたのね」


「…………」


この恋は、絶対どこかで綻びが出るはず。不思議とそう確信できた。


サッと顔が曇る恵ちゃんとは対照的に、あたしの心はスッと晴れ渡っていく。


「ちなみに映画は家で観る派なのよ、陽介は。人混みが嫌いなのよね。ああ見えて意外とインドアなの」


拳を口にあててクスクス笑えば、恵ちゃんは顔を赤くして、下唇を噛んで俯く。


陽介の、歴代カノジョの愚痴は大抵、女の買い物の時間の長さとか、映画の公開日にわざわざ並んで映画館で観る非効率さとか、決まって普通のカップルが普通にする事に対するものだ。


彼氏と一緒に何かをすることに対して重きを置く女の子にしてみれば、陽介はあまりに現実的で効率重視なのだ。


女の子の買い物に、男がついていったって無駄。自分の意見を言った所で、最終的には自分の決めた服を選ぶし、女同士で買い物に行った方がいい。


映画館で高いお金を払って、周りに気を遣って映画を観るより、レンタルで好きなものを食べながらのんびり家で観たい。


陽介はあたしにだけ、そういう本音を漏らしていた。


だから、恵ちゃんと一緒にいる時の陽介は、彼女のご機嫌をとるために無理している姿のはず。


陽介が最終的に自然体でいられる所は一目瞭然だ。


たとえ陽介がこの娘に夢中であったとしても。


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