あたしが欲しかったもの-2
アンティーク調のインテリアセレクトのこのお店に、陽介のカノジョとセフレという妙な取り合わせ。
恵ちゃんには社交辞令と思われていただろうけど、あたしは半ば強引に彼女と連絡をとって、今日のこの日をこぎつけた。
とにかく陽介の本心が知りたかったから。
こんな娘に本気なのかを。
やけにふかふかなソファーに腰掛けながら、あたしはメニューを見る振りをする。
その傍らで、チラチラ恵ちゃんをこっそり窺うけれど、やっぱり見れば見るほどわからない。
まあ、冴えないけれど、顔立ちは悪くない方だとは思うし、彼氏がいたっておかしくないとも思う。
ただし、陽介みたいな彼氏じゃなく、真面目そうな彼氏と清い交際してます! みたいなそういうのが似合いそうな女の子。
陽介は軽いを絵に描いたような、見た目がチャラい男だし、そんな二人が並んでいると明らかに違和感を感じる。
要は似合わないってことなんだ。
一つの結論が出た時、タイミングよくガトーショコラとアイスティーが2つずつ、テーブルの上に並べられた。
粉雪のように散らばった粉砂糖に、 少しとろけた生クリームがちょこんと乗ったそれは見た目にも食欲を刺激するものだったらしく、
「わあ、美味しそう」
と、恵ちゃんは、一瞬だけその丸い瞳をキラリと輝かせた。
……単純。
頬杖つきながらあたしは呆れたように笑う。
「ここのケーキはどれも絶品なのよ。今日はあたしが無理に誘ったんだし、ぜひご馳走させて」
「え? でも……」
「いいのいいの、遠慮しないでよ」
なんだかやっぱり上から目線になってしまうのは、どこかで見下しているからなんだろうな。
あたしの申し出を固辞しようとする恵ちゃんに引き下がらなかった結果、彼女は小さく頭を下げることとなった。
何となく、その根負けした姿が心地よく感じた。
「陽介とはよく来る? こんな感じのとこ」
アイスティーを一口飲み込んでから、そう会話を切り出す。
陽介のこと以外で、この娘と話すことなんて何もないんだから、本題に入らないと時間の無駄なのだ。
陽介は、きっと錯覚しているだけ。
美味しいステーキを食べ続けていれば、たまに安っぽいカップラーメンが食べたくなる、そんな感覚なんだろう。
そうじゃなきゃ、あの陽介がこんな冴えない女の子と付き合っているはずがない。
あたしの質問にどう答えるべきか考えていたのか、恵ちゃんはアイスティーを一口飲み込んでから、コン、とグラスをテーブルに置いた。