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ケーキを冷蔵庫にしまっていると、「おー!うまそー」とテーブルに並べられた料理を見て、湊は笑顔を零した。
「でしょー?早く食べよ」
2人で向かい合って座る。
湊は、うまいうまいと言って自信作のパエリアを頬張った。
湊はいつ見ても清潔な食べ方をする。
自分も見習わなくては…と密かに陽向は思っていた。
「料理上手だよな、意外と」
「意外じゃないし」
「ははっ」
料理を平らげた後、ソファーに並んで座りながら今日買ったワインを飲む。
「あのさ」
「ん?」
ほろ酔いの目で湊を捉えると、顔面にいきなり何かを押し付けられた。
「あっ!なに!?」
陽向はそれを手で掴んだ。
サンタの帽子を被ったペンギンのぬいぐるみだ。
「あー!かわいー!」
「お前、ペンギン好きだろ?」
「うんっ!」
「こいつさ、北極のおもちゃ屋で買ったの」
「あははっ。じゃあこんな国じゃこの帽子暑いだろうね」
「うん、取ってやって」
陽向は笑いながらペンギンが被っている帽子を取った。
そこから何かがポロリと落ちる。
「へ?」
手のひらに落ちたのは、シンプルなデザインのネックレスだった。
ピンクゴールドの輝きが目に眩しい。
「えっ…え?!」
「クリスマスプレゼント」
「うそ…」
「お前、この前これ可愛いっつってただろ」
それは随分前の話だ。
テレビでショッピング番組を見ていた時、シンプルな四角の六面にダイヤが散りばめられているネックレスの紹介がされていた。
シルバー、ゴールド、ピンクゴールドの3色があり、アナウンサーらしき女の人が紹介をしていたのだ。
「こーゆーの可愛いよねー!」
「そー?」
「シンプルなネックレスが欲しいなー。どっかに売ってないかな」
「下北とか行けば安く売ってんじゃね?」
「そーかなー?そろそろこーゆーのも欲しいな。大人っぽくていーじゃん」
「お前は顔がガキだから今のまんまでいーんじゃねーの?」
「ガキじゃないもん!」
そんな会話をしたことを思い出した。
覚えててくれたんだ…。
「はい、あっち向いて」
言われた通りにすると、湊は陽向の手からネックレスを受け取り、前から手をまわした。
と、その時、両手で頬を掴まれ、キスをされる。
陽向が笑い声を上げると、湊もケラケラ笑った。
そのまま湊を見上げる。
「つけらんない」
「ありがとー…湊…。覚えててくれたの意外」
「うっせ。ほれ、あっち向けよ」
湊がネックレスを付けてくれる。
そして、後ろから優しく抱き締められる。
陽向は湊の腕を握ってイヒヒと笑った。
「あのね」
「なーに」
「あたしからもプレゼントあるの」
「え?」
陽向は立ち上がると、ベッドルームに向かい、クローゼットの中から包み紙に包まれた物を取り出し、湊の前に座った。
「はい」
「サンキュー。開けていい?」
「どーぞ」
湊は包み紙を綺麗に剥がし、中の物を見た途端、目を丸くした。
「えっ!マジで?!うわぁー…やったー…」
湊はドラムのスティックを見て満面の笑みを浮かべた。
この前一緒に楽器屋に行った時、湊が新しいスティックか欲しいと言っていたので内緒で買って来たのだ。
「新しいの欲しいって言ってたじゃん?先に買われちゃってたらどーしよーかと思った」
「覚えてたんだ」
「うん」
「ありがとな。…あー。マジで嬉しい…」
スティックを眺める湊を見て、陽向はぷっと吹き出した。
「何笑ってんだよ」
「だって湊子供みたいなんだもん!かわいいなーと思って」
ほっぺたをぎゅっと掴まれる。
「痛いバカ」
「お口が達者でちゅねー」
「ばーかばーか」
「喋れなくしてやる」
湊はそう言うと、陽向のほっぺたを優しく包み、自分の唇で陽向のそれを挟んだ。
唇が離れ、お互いに微笑む。
今度は陽向からキスをする。
唇を離そうとした時、湊に頭を掴まれ「やだ。もっと」と囁かれ、胸が熱くなる。
陽向は目を閉じて、もう一度優しいキスをした。
思い切り抱き締められ、舌がねじ込まれる。
「ふ…ぅん…」
ワインの残り香が2人を包み込む。
陽向は湊の首筋に腕を回して抱き締めた。
一瞬、唇が離れる。
そしてまた、互いを求めて重なる。
いつもより長いキスに酔いしれて、湊を感じる。
「ベッド行こっか」
陽向がコクンと頷くと、湊は陽向の背中と膝の下に腕を入れて軽々と持ち上げた。
「重いから降ろして」
「意外と重いわー。腕折れそ」
「もうっ!」
笑い声を上げる湊の胸を叩く。
湊は陽向をベッドに優しく寝かせると、上から覆いかぶさり激しく唇を貪った。
「あっ!…んんっ」
舌が耳を這う。
「すっげー耳赤い」
「っ…からかうのやめてよ」
湊の舌が首筋を辿る。
左手では胸を揉みしだき、右手はショーツの上を行き来している。
時々、敏感な部分を掠めるその行為がもどかしい。
「んっ…ぁ…」
湊はキスしたまま陽向のスカートを脱がせ、ショーツも取り去ると、ゆっくりと秘部に指を這わせた。
「いつから濡れてたの?すごいけど」
「いっ…今に決まってんでしょ!」
陽向は顔を赤くして湊を睨み、ほっぺたをつねった。
意地悪な顔はケラケラ笑っている。
そのまま柔らかいキスをされたかと思うと、同時に指が入り込んできた。
「んぁ…」
初めて湊と身体を重ねた時を思い出させるような、優しくて包み込まれるような動きに声が漏れる。
湊は陽向にキスをし、意地悪さのかけらも感じさせない声で「陽向…」と呟いた。