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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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トラブルの果てに-8

その日は嘱託の越後さんが私用で休みだった。


まあ、これ自体はトラブルでもなんでもない。


越後さんは数日前からこの日は休むと言っていたし、これまでにも休んだことがあったから、あたしはこの日もなんとかなると思っていた。


だけど、トラブルは平和な昼休みにあたしに襲いかかってきた。


いつも通り、総務課の隅に置いてあるテーブルでお弁当を広げ、女子職員の人達と下らない話に花を咲かせながら箸をつついていた時のことだった。


「すいません、パスポート作りたいんですが」


と、50代半ばに見える夫婦が窓口にやってきた。


昼休み中にお客さんが来ることはよくあるから、あたしは大して気にも留めずにその夫婦の応対をすることになった。


夫婦は、戸籍謄本を一通(同じ戸籍に名前があれば、謄本一通でよい)、身元確認書類は運転免許証、パスポート用の写真をそれぞれ用意しており、県収入証紙2000円分、収入印紙14000円分を二人分きちんと用意していた。


あとは申請書を記入してもらいながら、松村主査か寺内主事に住基ネットを開いてもらい、住所を確認できれば受け付けできる。


いつも通り住基ネットを立ち上げてもらうべく、あたしは松村主査か寺内主事のデスクに声をかけようとした。
だが、二人の姿はそこにない。


そういえばさっき二人が、美味いと評判の中華料理屋の話をしていたのを思い出した。


寺内主事が行きたいとしきりに騒いでいたから、お昼はそこへ食べに行ったのだろう。


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