トラブルの果てに-4
副島主幹は、
「あいつはさ、昔は見た目通り明るくて、ノリのいい奴だったんだけどなあ」
と、淋しそうに呟いていた。
その言葉に、あたしは心の中で驚きの声を上げた。
あたしからすれば、そっちの姿の方が信じられない。
「じゃあ、なんで久留米さんは変わっちゃったんですかあ?」
無邪気に質問を投げかけるクミちゃん。
質問しづらいことを空気も読まずに口に出せるのは、クミちゃん独特の天然故に為せる業なのかもしれない。
副島主幹は煙草をブリキのバケツに放り投げると、オールバックの髪の毛を軽く撫でつけてから、
「まあ、アイツも色々あったんだよ」
と、伏し目がちに答えた。
副島主幹は、ロカビリーが似合いそうな雰囲気の、ちょっと怖そうな人ではあるけれど、話してみればとっても気さくで面白い人である。
普段は冗談ばかり言ってあたし達を笑わせてくれる副島主幹が、真顔でそう答えたことにより、久留米さんにはワケ有りな過去があると、なんとなく思った。
「ふうん、久留米さんってめんどくさそうな人なんですね」
クミちゃんは、あっけらかんとそう言うと、まるで久留米さんを見限ったように、吸ってた煙草をポイッとバケツに投げた。
そして、次の日からクミちゃんは
「建設課の桑原(くわはら)さんってカワイイ」
と、語尾にハートでもついてそうな口調でキャピキャピしていた。