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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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トラブルの果てに-11

ご夫婦が申請用紙を記入している間に、あたしは一緒にお弁当を食べていた嘱託のおばちゃんや、職員の女の子に事情を話し、松村主査や寺内主事を探しに行ってもらうことにした。


奴らの携帯番号を知ってる人はいないのかと、辺りを見回すけれど、総務課は男性職員がみんな出払ってしまっていた。


おそらく寺内主事の携帯の番号を知っているであろう文屋さんだって、大久保さんとお昼を食べに外出してしまったし。
癒し系課長は、今日は丸一日出張でいないし。


どうしてここの男共は役立たずばかりなの、と心の中で舌打ちした。


かくなる上は、このご夫婦が何度も申請用紙を書き損じて、時間を稼いでくれるのを願う他ない。


しかし、“急がば回れ”とはよく言ったもので、ご夫婦はそれは丁寧に丁寧に申請書を書いてくれたもんだから、難癖のつけようのないくらい完璧な申請用紙を完成させてしまった。


パスポートに載る、自署欄の文字も文句なし。


戸籍も身元確認書類の住所も申請用紙と一致。


あとは住基ネットで照らし合わせるだけ……。


なのに、バカ松村とバカ寺内は一向に現れない。


探しに行ってくれた職員の女の子が戻ってきたときに、救いの目を向けたけど、彼女は黙って首を横に振っていた。


わかっていたけどね。
あのバカ共は中華料理屋まで行っちゃったんだから。


あたしのうろたえぶりが伝わっていたのか、旦那さんの方が少しイラついてきたようで、机を指でトントン叩き始めた。





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