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傍らに咲く花
【同性愛♀ 官能小説】

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上り坂の途中-2

「……うまい」


とろける程の肉の柔らかさに舌鼓を打っていれば、向かいに座る小夜はローテーブルに両肘をついてニコニコ見つめてくる。


「今日は翔平のお祝いなんだから、たくさん食べてね」


そう言って彼女は菜箸で赤い肉をつまみ上げ、鍋の中にまた一切れ放りこんでいた。




小夜の言うお祝い、とは俺の内定が決まったことを指している。


今は桜もすっかり散って、新緑の季節を迎えようとしている4月末。


大学4年生に進級早々の今の時期、しかも第一志望だった情報通信業界の大手企業の内定を勝ち取った俺。


まさか自分が最終選考まで残って、内定をもらえるなんて思わなかった。


たとえそれがまぐれだとしても、運も実力のうち、なんて言葉もあるし、この結果を有り難く頂くことにしたのだ。


もちろん一番最初に報告したのは、目の前でようやくすき焼きを食べ始めた、愛するカノジョ・小夜。


思えばこうやってどちらかの家で飯を食べるなんて、随分ご無沙汰だったような……。


互いに一人暮らしで、一緒にいようと思えばいくらでもそう出来たのに、「就活に集中してほしい」と、彼女はそう言って会うのも必要最低限にさせられた。


最初のうちこそ会えない寂しさが募って、就活に身が入らなくて、なかなか会ってくれない小夜に理不尽な苛立ちを持ったこともある。


でも、こうして内定を勝ち取った今では、小夜のそういう気遣いがあったからだと理解できる。


会いたいからと自分の想いを押し付けるだけじゃない、本当に相手のためを想って、実は我慢してくれていたんだとわかると、一層小夜が好きになっていく。


だから、内定が決まって真っ先に報告に行った時の小夜の花咲くような笑顔を見れた時、俺はますます小夜を大切にしていこう、と決めたのだった。


「……小夜」


「ん?」


「俺、小夜とこうして一緒にいられて、すっげえ幸せ」


いろんな想いが込み上げて、ついつい溢れるように気持ちをポロリと伝えると、


「え、あ、よ、酔っ払っちゃったの!?」


と慌てふためいて箸を落とす小夜。


すごく挙動不審で、耳まで真っ赤で。


でも、それが可愛い。もう、めっちゃ可愛い。


あー、俺、好き過ぎて死んじゃいそう。


そんな挙動不審な彼女を微笑ましく想いながら、俺は汗をかいたグラスを口に運んで、よく冷えたビールをグビ、と飲み込んだ。





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