滲む瞬間(とき)-4
(3)
椎名には小峰明日香という恋人がいる。元同僚の教師で、付き合いは七年ほどになる。セックスの相性はかなりよく、淫らな行為にも積極的に応じてきて感度も抜群。彼の経験の中でも最も気に入っている女である。
(いずれ結婚するかもしれないな……)
そう思うほど離れがたい魅力をもっていた。
その明日香とひと月近く会っていない。気持ちが薄れたのではない。友紀が心を占めていたのである。禁欲しているつもりはなかったが、少女の肉体により昂奮し、酔いしれたい想いはあった。
何度もメールや電話がくる。その度に理由をつけて引き延ばした。
「好きな人、できたの?」
「ちがうよ。俺だって会いたいんだ。仕事や実家の用事がいろいろ重なって」
毎週のように肌を合わせていたのだ。体は疼き続けているだろう。
「八月中には片付くから」
(友紀……)
夜、目を閉じると美しい少女の裸身が舞う。伸び上がり、回転し、脚を開く。だが秘部は見えない。
その様相を想像する。
マシュマロのように柔らかだろうか。白磁の輝きに似て眩しいだろうか。水を弾くか、しっとり吸い込むか。
彼の一物は怒りを蓄えたように吠えていた。
あと二回、下着姿のままたっぷり性感開発を施していこう。そうしていよいよ次の段階へ進むのだ。椎名の妄想は次々と広がっていった。
ところが翌週やって来た友紀から夏休みは田舎に行くことを知らされ、計画が崩れてしまった。
「夏休みになったらすぐいくの」
お盆過ぎまでいるという。従って塾も休むということになる。
(個人指導ができなくなった……)
椎名の落胆は相当なものであった。
「毎年行ってるの」
「そうか……。来週来て、しばらくお休みなんだね……」
「あ、来週の日曜日はデパート行くの。お土産とか、いろいろ買うの」
「え?お休みするの?……」
「はい。後期の夏期講習は来ます」
(なんてことだ……)
思い描いていた愉しみが萎んでいく。
「じゃあ、ハンドパワーもしばらく出来ないね」
「効き目がなくなっちゃう?」
「そうだね。間が空くと弱くなるね。残念だけど……」
「どうしよう……」
本気で困った顔をみせる。首をかしげて考えるあどけない友紀を見つめているうちに不意に体が熱くなってきた。
(思い切って、踏み込むか……)
彼がどこに触れても友紀は微塵も拒絶をみせない。完全に身を任せきっている。結果的に一種の催眠状態にあるといえよう。もう少し時間をかけたかったが、ひと月先までとても待てない想いだった。思惑が狂ったことでこれまで抑えていた欲望が剥き出しになった感じだった。
「それじゃ、弱くならないように、今日、特別強いパワーをあげようか」
「お願いします」
「わかった。友紀ちゃんのために頑張ってみるよ。特別パワーだからいつもとはちがうよ。わかったね」
自分の声がかすかに震えていた。歯止めが利かなくなる予感があった。
今日の服装はショートパンツにTシャツである。胸の突起がわかる。スリップは着ていない。
友紀は椎名に促されるまでもなく短パンを脱ぎ、ベッドに横になった。
「友紀ちゃん。Tシャツはちょっと生地が厚いかな。いままでスリップでしょ」
「パワーが効かない?」
「うん……効きにくいかな」
考える顔を見せ、
「脱いだほうがいいかな……」
「それが一番いいんだけど……」
「じゃあ、脱ぐ」
起き上がり、脱ぎかけてから、
「恥ずかしいな……」
「きれいになるためだもん。恥ずかしいなんて思っちゃだめだよ」
「……はい……」
ためらうほどのこともなくすんなり脱いだ。
(なんと、可愛い……)
動いても揺れることのない小さなふくらみ。揉み上げることなどとてもできない微乳である。それに比して乳首は意外なほど大きい。口に含んで舌で転がせる粒である。乳輪の色は霞んだようなピンク色。……
椎名の息遣いは次第に弾んできた。
アイマスクをつけて横たわった体を舐めるように眺める。伸びやかな肢体。若木、若芽、萌え上がり、これから匂い立つ乙女になっていく肉体。
動かしてみたくなった。
「友紀ちゃん少し体を温めてからするからね。準備運動するよ。脚を上げてみて」
「はい」
上げた両脚を抱えさせた。
(おお……)
股間の丘が露になり、下着が食い込んだスジがくっきりと現われた。今日のパンツはブルーだ。性器の形が仄かに浮き出ている。そこだけ見ていると小学生であることを忘れてしまうほど淫靡である。
「さあ、脚を開いて」
「はい」
男を迎える格好だ。股が開き、スジが消え、わずかに割れ目の凹みができた。アソコも開いているのだ。
椎名は様々なポーズを要求した。
「ブリッジできるかな?」
「できます」
後ろ手をついて湾曲になる。反った胸の膨らみがなくなって乳首だけがぽつんと残った。腋も毛が生えていないから真っ白である。
「今度は腕立てして」
オッパイが垂れて膨らみを見せた。
(友紀……一か月会えないなんて……)
椎名の頭は混乱し始めていた。