滲む瞬間(とき)-2
(2)
入塾した時から友紀には目をつけていた。美少女、というわけではない。彼の心をとらえたのは控えめな愛らしさであった。
(幼すぎるか……)
初めはそう思ったが、迷いが生じるくらいの段階に意味がある。観察していると尻の円み、腰回りなど子供らしさの残るちょうどよい肉の付き具合である。あと数年経てば腰も張って大人の体形を帯びてくる。
(もし無理なようならやめればいい……)
問題は個人的に接触を持つきっかけであるが、これはすんなりといった。ある日授業が終わって片付けをしていると友紀だけが俯いて座っている。
「どうした?みんなと一緒に帰らないの?」
顔を上げてちょっと淋しそうに笑って立ち上がった。友紀は他県から転校してきたのである。それとなく見ていると他の子とほとんど話もしていないようだ。引っ込み思案な性格もあるのかもしれない。それにしても一人だけ残っているのは初めてである。
「何かあったの?元気がないね」
訊いてみると理由がわかった。授業前にアイドルグループの話になり、友紀も大好きだったので加わった。自分も歌って踊れるタレントになりたい。楽しくてふと口にしたことでみんなの攻撃を受けたという。
「可愛くないとなれないのよ」
「あんたなんか無理よ」
言われて落ち込んでいたようだ。
イジメというほどのものではないだろう。だが子供の言葉は悪意がなくても時に残酷な要素を含むことがある。
(いいチャンスだ)と思った。
「友紀ちゃんならきっとアイドルになれるとおもうよ」
「ほんと?先生」
目が輝き、とてもあどけない。
「可愛いからなれるよ」
「可愛くないです」
「可愛いよ。だけど、大人っぽく、きれいになるともっといいかな」
「あたしもきれいになれる?」
「なれるよ」
「どうしたらいいの?」
「うん、そうだな……」
彼はさも考える様子を見せて、
「秘密の方法があるんだけど……」
「秘密?」
友紀の真剣な眼差しが迫ってきた。
前から考えていたことだった。
『ハンドパワー』があるんだ。心も体も美しくするパワー。……きれいになりたい、可愛くなりたい。女の子の願望をくすぐる言葉。突飛な話だが信じてのってくればしめたものだ。
「ぼくにはそのパワーがあるんだ」
縋るように見つめる友紀の瞳。完全に引き込まれていた。
「 パワーは少しずつ効いてくる。誰にも言ってはいけない。そうすると効き目がなくなってしまう。できるかな?」
友紀はこっくりと頷いた。
「集中しないといけないから休みの日においで。内緒でね」
「はい……」
「人に知られるときれいになれないよ。わかったね」
くどいほど念を押した。
そうして友紀は彼の手の中に入ってきた。
初日は先週の日曜日。友紀は約束通りやってきた。小さなフリルのついたスカートに白いブラウス。普段着ではない。特別な想いでやって来たにちがいない。
「おめかししてきたね。お母さんには何て言って来たの?」
「お友達の家に行くって……」
「そう。約束を守ってるね」
友紀は口を固く結んだまま頷いた。
寝室に連れていき、まずベッドに座らせた。
「友紀ちゃん。可愛いお洋服だけど、パワーが届きにくいから脱いでくれる?」
「わかりました」
難関と思われた第一段階はあっさりクリアした。むろん恥じらいを知っている年齢である。だが少女は『先生のパワー』を信じ切っている。
ブラウスを脱ぎ、ちょっと戸惑いを見せ、
「スカートも?」
「うん。そのほうがいいね」
さすがに緊張した。
真っ白なスリップが眩しい。
(おお……)
パンツは意外にも大人びたものだ。切れ込むように股に食い込んでいる。ピンク色で生地は薄い。もし水に濡れたら割れ目が透けて見えそうだ。
(今時の子はこうなのか……)
昂奮がさらに高まってくる。
心を落ち着かせるためと説明してアイマスクを着けさせて仰向けに寝かせた。
「いいと言うまで外しちゃだめだよ」
本音をいえば見つめられていてはやりにくい。
胸はパンケーキほどしかない。ブラジャーはしていないから小さな突起がポチっと浮き出て見える。スリップの裾から股間を覗く。
(スジだ……)
シワではない。割れ目に食い込んでいる。
(ここが濡れる時が来るのか……)
わくわくする。ムラムラする。
「さあ、始めるよ。出来るだけ何も考えないようにしようね。時々直接手を触れてパワーを送るから力を抜いてね」
「はい。お願いします」
不安のないしっかりした返事だった。
椎名は時折呪文のような声を交えながら友紀の体に触れた。アイマスクをしているから存分に眺めることができる。
瑞々しい肌。子供……ではあるが、そうとも言えない魅力もある。芽生えかけた美しさ。汚れがない。動悸が高鳴り、感動すら覚えていた。