家族-10
田口は言われた通りにうがいをし、手を洗った。そして自分がメチャクチャにした部屋へ入る。
「うわっ!?」
田口は目を疑った。まるで何事もなかったかのように整っていたからだ。あれだけ派手に破壊した部屋に破片の一つなかった。テレビ等、家具も全て新品が置かれていた。
「だ、だって…ついさっきまであんなにグチャグチャだったじゃん…!」
驚き過ぎて開いた口が塞がらなかった。
「私がやったのよ?感謝してもらえる??」
「そ、そりゃあ感謝しますけど…、どうしてこんなにすぐ…」
「高田グループをナメない事ね?」
瑞穂はニコッと笑った。
「これから私もここに住んで君の世話をするわ?いいわね?」
「い、一緒に住むんですか!?」
「当たり前じゃない?母親だもん。」
「母親って…。あなただって自分の生活があるでしょ!?」
「私の生活はこれから君の世話をする事だから何の問題もないわ?」
「そ、そんな若い母親いないよ!!」
「私、いくつに見える?」
「に、25くらい??」
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃないの♪私はもう32でそんなに若くないから安心してよ。」
「え?マジ…?」
とても30歳を越えているようには見えなかった。
「いい?私は何があっても君…、いえ、徹を見捨てないわ?本当の母親がどうだったかは知らないけれど、ね?」
全て知っているかのような口振りだった。
「まぁあまり深く考えないで親子しようね?あと、母親以上の事、してあげるから。ウフッ」
ゾクッとするほど色っぽい表情を見せられた田口。しかしながらどうして瑞穂と親子ごっこをしなければならないのか全く分からなかった。
「じゃ、お腹すいたでしょ!ご飯作ってあげるわ?何が食べたい?」
「え…?んと…、カレー…」
「徹、私を馬鹿にしてるのかな?」
「な、何でですか!?」
「難しい料理できないと思ってカレーって言ったんじゃないの?」
「ち、違いますよ!!マジで食いたかったからですよ!」
「そう。ならいいけど。」
瑞穂は素っ気なく行って台所へ言った。
「何か調子狂うなぁ、あの人…」
不思議な女性に思えた。何となく敵にしてはいけないような雰囲気を持っている。しかしかなりいい女だ。スリムながら胸の膨らみは相当なものだった。ギャル服が似合いそうだが和服も似合いそうな容姿。とにかく凄くイイ女だ。
「アニキのお姉様に手を出しちゃいけないぞ…!?」
田口は自分に言い聞かせた。